橋、道路、ダムに魅せられ建造物をつくる仕事に

「私がこの会社に就職したのも、学生時代に橋や道路、ダムといった大きな建造物に言葉にできないカッコよさを感じたからです。計算された曲線や機能美。特にインフラは設計者の名前はおもてには出ないし、まさに縁の下の力持ちという感じがして好きなんです」

高橋さんは1984年、北海道の札幌市に生まれた。高校生の頃から「地元を出たい」という気持ちが高まり、大学は愛媛大学の工学部に進学。在学中に四国と本州を結ぶ西瀬戸自動車道(通称:しまなみ海道)が全線開通し、見学で訪れた橋の美しさに胸をうたれた。大学院進学後、担当教授の推薦で受けたのが東亜建設工業だった。

【上】東亜建設工業土木職の現場勤務者の構成/土木職の女性現場勤務者は、高橋さんをはじめとして、年々増えてきている。【下】仕事の必需品/通う現場は海の上。ライフジャケットとヘルメットは必須。防水の手帳と計算機なども。

同社は海洋土木を得意とする「マリコン」として、100年以上の歴史を持つ建設会社である。長い歴史の中で東京湾の埋め立てを担ってきた。事務所の先に広がる広大な廃棄物処分場である新海面処分場もまた、これまでに手掛けてきた埋め立て事業の一つだ。

学生時代から「建設会社で施工管理の仕事をしたい」という思いがあった。

「大学で土木を学んだからには、建設業にどっぷり漬かって働きたい。工事現場はその最前線です。多くの人と協力しながら、一つのものをつくり上げていくイメージに魅力を感じました」

最初は横浜にある研究所に配属された彼女が、実際に工事の現場で働き始めたのは入社3年目のことだ。その頃の東亜建設工業には、総合職の技術者として施工管理を担当する女性社員は一人もいなかった。とりわけ海洋における現場は、建設業界でも女性が少ない分野である。小さな事務所ともなると、女子更衣室や女子トイレがないことも当たり前だった。

「最初はどこに行っても『おお』と驚かれましたね。でも、現場の人たちにはとても温かく迎え入れられたという感触があります。父親どころか祖父くらいの職人さんも多いのですが、『暑いのに大変だな』ってチョコレートをもらったり――。いまではそんな思い出ばかりが胸に残っています」