いま活躍している女性管理職たちも、着任当初は不安も失敗もあったはず。ここでは彼女たちが着任した当初の100日間を振り返ってもらい、その実体験や乗り越えたエピソードを語ってもらった。

▼キリンビール マーケティング部商品開発研究所 新商品開発グループ 主務 神藤亜矢さん
長所を生かしてこそ管理職を任された意味がある

管理職の内示があったのは、入社15年目でワイン営業部のとき。迷いはあったが先に管理職になった先輩女性から「あなたが昇格すれば、優秀な後輩たちも後に続くことができる」と背中を押された。

神藤亜矢●キリンビール マーケティング部商品開発研究所 新商品開発グループ 主務。1996年メルシャン株式会社に入社。ロンドンでマーケティングを学び、輸入ワインのブランドマネージャーや広告・販促を担当し、2014年より現職。

1996年に入社以来、ブランドマネジメントを中心に担当した数少ない女性管理職。「女性にワインをもっと広めるために、事業の意思決定に女性が関わるべきだと思ったし、権限が大きくなる立場でやりたいこともあったんです」

それまで以上に裏表なく常にオープンであることを心がけた。そして使命から逃げずにやり遂げる覚悟も新たにした。交渉で生じる衝突で妥協しないなどは、自分の仕事だけでなく、部下の成長支援でも同様のことだ。

一社員としてできることは限られている。しかし、部下が成長するのを見るのは「自分の成長とは次元もスケールも違う大きな喜び」。それに立ち会う自分の成長も桁違いだ。

若手社員が自分を上に見すぎたり、自分も新人時代のことを忘れてしまい、距離を感じる瞬間がある。そんなときは、悩むたびにつづってきた詳細な日記を読み返す。

「経験が浅くて不安だった頃が自分にもありました。初心を克明に思い出すことで、若い人と同じ目線に立つことができます」

注意したいのは、自分の欠点やできなかったことばかり反省しているうちに、もっと大切な自分の長所まで忘れてしまうことだ。

「反省も必要。でも本来は何が強みだったのかを思い出して、そこに立ち返ることも大切。長所を生かしてこそ管理職を任された意味があるのですから」。部下の能力の引き出し方に悩んだときも、逃げずにやり遂げるという身上が生きた彼女ならではのアドバイスだ。

▼新任管理職時代、こうして乗り切りました!

《Before》与えられた仕事を淡々とこなす部下のやる気を引き出せなかった
与えられた仕事は問題なくこなす部下が、どうしてもルーティン以外の仕事をするモチベーションが持てず、どのように接しても、やる気を引き出せなかった。


《After》「長所が生かせる仕事があるはず」部下の業務を書き出し伸びしろを見つけた
彼女にしかできない仕事を見つけるため、業務をすべてリストアップ。ある業務でその人なりの視点で見直しをしてもらい、数百万円の予算削減を達成。本人にも自信を持ってもらえた。

冨田寿一郎=撮影