いま活躍している女性管理職たちも、着任当初は不安も失敗もあったはず。ここでは彼女たちが着任した当初の100日間を振り返ってもらい、その実体験や乗り越えたエピソードを語ってもらった。

▼高島屋玉川店 販売第3部 リビング・家庭用品売場
セールスマネジャー・課長 芦川あゆみさん

本来の自分を出して積極的に現場に溶け込み信頼をゲット!

売り場担当や広告などを考える企画部門を経験し、社会人9年目にマネジャーに昇格。部下の正社員5人は、59歳の男性を含め、すべて年上。有期雇用、取引先から派遣される販売員を含め総勢約60人のチームを任された。

芦川あゆみ●高島屋玉川店 販売第3部 リビング・家庭用品売場 セールスマネジャー・課長。2004年入社。新宿店のベビー用品販売部門に配属後、玉川店の企画部門、リビング、玩具販売部門等を担当。12年ベビー用品セールスマネジャーに。

女性登用に積極的な職場とはいえ、異例の若さでの昇進。こんなに若くて大丈夫かという視線を痛いほど感じ、「完璧であろうと気負いすぎて、部下やお客様と距離ができました」。

そんなとき部下が顧客にお叱りを受け、上司として謝罪に赴いたが、「上から目線」「マニュアル通り」とかえって怒りの火に油を注ぐ結果となり、自分の男性上司が出向いてやっと一件落着したことがあった。自信をなくしたことで悪循環が生じ、数回同じ事態を繰り返した。そのあげく、上司を遠方まで謝罪に行かせてしまい、顔面蒼白(そうはく)で待っていると、戻った上司は「これくらい全部想定していたから落ち込むな。失敗も含めどんどんチャレンジしてほしくて抜擢したんだから、もっと『素』の自分を出して売り場のみんなに自分から溶け込んでいけばいい」と芦川さんを励ました。

それからは終日売り場に出て、わからないことは部下にどんどん聞き、受けた相談には即時のレスポンス、即断即決を心がけた。「こんなに売り場にいてくれるマネジャーは初めて」と次第に信頼を得られるようになった。

育児勤務やシフト勤務、時短、有期雇用など、さまざまな雇用形態の人々が入り交じる職場。意思疎通をはかるのは大変だが、何度も声をかけて情報共有や周知徹底に努めている。

「一生懸命やれば、必ず誠意は伝わりみんなが支えてくれる。本来の自分を出すことを恐れないで」

▼新任管理職時代、こうして乗り切りました!

《Before》気負いすぎてお客様や現場と距離ができ顧客対応で失敗
若くて女性でマネジャーに抜擢されたので気負いが先に立って、現場と距離ができていた。顧客対応で、部下の対応のおわびをしたらかえって怒らせてしまい、自分の上司に謝罪させてしまった。


《After》「完璧な対応」を求めず自分から積極的に売り場に溶け込んだ
上司に「最初から完璧など期待していないので、もっと『素』の自分を出して現場に溶け込んでいけばいい」と言われ、売り場に始終いるようにし、わからないことはどんどん部下に尋ね信頼を得た。

冨田寿一郎=撮影