“らしさ”のリミッターを外してみよう

【茂木】以前、ある会議で、(14年にノーベル平和賞を受賞した)マララちゃんのお父さまが、マララちゃんをどう育てたのかということについて、「私がマララにしてやったことは女の子だからこれはダメだとか、女の子だからこうしなさいということを言わなかったことだけだ」とおっしゃっていました。そういう意味では澤さんも、女の子だからということは子どもの頃からあまり言われませんでしたか?

【澤】そうですね。女の子だからとか男の子だからとか、こういうふうにしなさいというのはなかったですね。勉強もスポーツもそうですが、何々しなさいということが全くなかったですね。

【茂木】それは親御さんが偉いですね。悩みのかなりの部分って“らしさ”をめぐる悩みで、自分らしさというものを固定して考えちゃっているんじゃないかと。例えば仕事が変わるときに、今までの“自分らしさ”が消えてしまうことに悩む人が多いと思うんです。澤さんの話を伺うと、最初から“こうしなくちゃいけない”ということがなかったということですね。

【澤】私、30歳のときに再度、海外にチャレンジしたんです。そのときに迷ったのは、日本での生活もすごく充実していましたし、守りに入っていたんですね。別にわざわざ今の環境を変えてまで行く必要もないな、というのもありましたし。でも20歳でアメリカに行き、十分に力を出しきれなかったとき、またアメリカでやりたいなとずっと思っていたんですね。だからここで行かないと後悔するなと思ったんです。

【茂木】とくに4月は環境が変わる時期です。入社や異動などで環境が変わるときに意外と悩むことがありますよね。今、澤さんが“守りに入っていた”とおっしゃっていましたが、今までの成功体験とか、今までの“らしさ”を守ろうとするがゆえに悩んじゃうことってありますよね。そこでね、ピッと切り替えて、新しい環境でやれるといいんだけど。

【澤】ピッと切り替えたときに、意外にいけた! と思うことがあるんです。

【茂木】そう、いけた! ってね(笑)。それって、脳の仕組みからいうと「脱抑制」というんですけれど、抑制を外して新しい自分が出ると、意外とその悩みは自然と解決するんです。澤さんはきっと脱抑制が自然とできているんですね。それってコツみたいなものはあるんですか?

【澤】子どもの頃から自分がやりたいようにやってきました。悩んだり困難にあったとき、私はまずすべてを受け入れるんです。みんなそこから逃げたいと、目をそむけようとすることが多いんですけれど、私はイヤなこともすべて含めて受け入れるんです。そのときはしんどかったりしますが、下までおりたらあとは上がるだけですから。