変えるべきことと変えてはいけないこと

客室本部長になった09年、国内線で無料だった飲み物が有料サービスに切り替わったときの経験も忘れられない。美味しいドリンクという価値提供と、コスト削減の両立が期待できる改革だった。

「客室乗務員が、お客さまの目を見てサービスするのが怖くなったと言うんです。それまでのように、お客さまがお弁当を広げたタイミングでお茶を持っていくことができなくなりましたから。やはり、お客さまの前には、笑顔で立たせてあげたいと思いました」

しかし、無料サービスに戻せば業務量が一気に増える。結局、無料のドリンクサービスと有料の茶菓子との組み合わせで折り合いをつけた。何を変えたらいいか、何を変えてはいけないかを深く考えさせられた体験だったという。

キャリアを通して感じるのは、仕事の喜びもつらさもコミュニケーションから生じるということ。そんな思いを詰め込んで、ANAブランドの向上に努める。

【上】キャビンマネジャー(関西空港支店へ)【下】取締役執行役員/オペレーション部門副統括

■河本さんの経歴

1979年(22歳)ANAに客室乗務員として入社
1986年(29歳)成田へ異動(国際線に乗務開始)
1987年(30歳)国際線チーフパーサー
1991年(34歳)アシスタントマネジャー
1999年(42歳)キャビンマネジャー(関西空港支店へ)
2002年(45歳)課長(成田空港支店へ)
2004年(47歳)客室本部人材開発部長
2006年(49歳)東京客室部部長
2007年(50歳)客室本部副本部長兼、品質評価部部長
2009年(52歳)執行役員/客室本部長
2013年(56歳)取締役執行役員/オペレーション部門副統括
2014年(57歳)常務取締役執行役員/女性活躍推進担当
2015年(58歳)常務取締役執行役員/ANAブランド客室部門統括
2016年(59歳)取締役 専務執行役員/グループ女性活躍推進 担当、東京オリンピック・パラリンピック推進本部 副本部長

■Q&A

 ■好きなことば 
小さなことほど丁寧に、当たり前のことほど真剣に

 ■趣味 
ゴルフ、ハーフマラソン、生け花、アート

 ■ストレス発散 
同級生などと緩やかな集まりでのおしゃべり

 ■愛読書 
『ハリスおばさんパリへ行く』ポール・ギャリコ著

河本宏子(かわもと・ひろこ)
全日本空輸 常務取締役執行役員。京都府出身。同志社大学文学部卒業後、1979年全日本空輸入社。86年、国際線就航初期のメンバーを務める。99年に管理職に昇格。 2009年に執行役員客室本部長、14年常務取締役執行役員、16年取締役 専務執行役員。

貝塚純一=撮影