一日を一生のように生きる

練習では、アップダウンのシンプルな動作を淡々と繰り返す。その様子を、父義行さんが、少し離れたところから温かい目で見守っていた。ほとんど口を出すことはなく、時折、軽いジェスチャーだけでアドバイスをする。うなずき合う姿に親子の強い絆が見えた。

オリンピックでのウエイトリフティングは、床に置いたバーベルを頭上へ一気に引き上げる〈スナッチ〉3本と、床に置いたバーベルを肩まで引き上げて立ち上がってから、一挙動で頭上へ差し上げる〈クリーン&ジャーク〉3本を行い、各種目の最高挙上重量の合計で順位が決まる。5年かかっても記録は1kg伸ばせるかどうか……。忍耐が必要な競技だが「それがウエイトリフティングの面白さ」と三宅さんは笑う。

「ウエイトリフティングは100%自分次第。終わりはないし、気づきと成長、挑戦の連続です。9割は苦しい。でも結果が出たときの喜びはひとしお」

好きな言葉は「一日一生」。天台宗の僧侶大阿闍梨(酒井雄哉)の言葉だが「父からも昔から『今できることを一生懸命やりなさい』と言われてきた。だから、一日を一生のように生きたい。後悔だけは絶対にしたくないから」。

体の声に耳を傾ける

2016年夏、30歳の節目と共に、4回目の大勝負を迎える。年を重ねるごとに、心や体が心地よいと感じることを何でもやるようになった。春から取り入れたのがヨガだ。

「ヨガのおかげで『ここ意外と硬いんだな』とか『疲労が溜まっているな』とか、気づかなかった体の声に気づけるようになりました」

体が悲鳴をあげていれば、大好きな銭湯で疲労回復をする。

「痛みのある場所に触れながら『今日もありがとう。もう少し頑張ってね』と声をかけるんです」