地道な努力が会計リテラシーへの近道

その他には、もちろん円安による影響も挙げられます。ただ同じようにグローバル市場で戦っている日産やホンダと比較すると、こうした外部要因よりも企業自身の努力の跡が見受けられるのです。

なお、「2016年3月期決算説明会 プレゼンテーション資料」の「(見通し)連結営業利益 増減要因」によれば、2017年3月期には円高により減収減益が予測されています。ただ為替変動の影響で9350億円の営業利益が減る一方で、原価改善の努力によって3400億円のコストが浮く見込みです。外部環境にひたすら左右されるのではなく自ら創意工夫を凝らしていくその経営姿勢こそが会社を日本一に導いていったのです。

さて、この連載「会計リテラシーを身につける!【入門編】」も今回で最終回となりました。会計リテラシーはすぐに身につくものではなく、多くの企業事例を見ることによって少しずつ養われます。そのためにはやはりトヨタのように信念を持って地道な努力を重ねていくのが一番です。皆さんのさらなるご発展をお祈り申し上げます。ご愛読どうもありがとうございました。

秦 美佐子(はた・みさこ)
公認会計士
早稲田大学政治経済学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、優成監査法人勤務を経て独立。在職中に製造業、サービス業、小売業、不動産業など、さまざまな業種の会社の監査に従事する。上場準備企業や倒産企業の監査を通して、飛び交う情報に翻弄されずに会社の実力を見極めるためには有価証券報告書の読解が必要不可欠だと感じ、独立後に『「本当にいい会社」が一目でわかる有価証券報告書の読み方』(プレジデント社)を執筆。現在は会計コンサルのかたわら講演や執筆も行っている。他の著書に『ディズニー魔法の会計』(中経出版)などがある。2016年7月23、30日に早稲田大学オープンカレッジ中野校で会計講座「ディズニーの事例に学ぶ! 決算書の読み方と経営分析」を開講。