原価削減のトヨタ
大衆向けを主とする自動車メーカーでありながら当期純利益率8%台をたたき出すというのは並大抵ではありません。経済産業省が発表した「平成27年企業活動基本調査速報」に基づけば、2015年度の調査対象企業の当期純利益率全国平均は約3%と計算できます。一般的に、当期純利益率が5%以上であれば優良企業と言えますので、トヨタの当期純利益率8%は立派な数値です。
また、大手3社の当期純利益率について2016年3月期に至るまでの24期分で比較しても8%台はトヨタしか達成していないハイレベルな数値です。
長期スパンで見ると20年以上もの長きにわたり同業他社と似たような利益水準であったトヨタが、なぜ直近2年間で他社を大きく引き離すほど高収益となったのでしょうか。
実は利益率の改善には、徹底的なコスト削減が関係しています。以前より「乾いた雑巾をさらに絞る」と言われるほどコストの低減に工夫を凝らし、使用した部品の補充を知らせるためのかんばん方式やジャスト・イン・タイム(必要なものを必要なときに必要な分だけつくる)といった独自の生産方式を展開してきたトヨタ。そんなトヨタが、さらなるコストダウンに着手していたのです。
2003年3月期から2016年3月期までの原価率の推移をみると、直近2年間の原価率は特に低いことが分かります。
直近2年間を除けば、原価率は70~85%あたりを推移していました。それが、2015年3月期には66%、2016年3月期にはさらに64%にまで低下しました。これはコストダウンに成功していることになります。
原価率が下がれば、その分利益率が高まるのは言うまでもありません。直近2期で過去最高水準の当期純利益率を達成しているのは、原価率の低下によるものだったのです。では、もともとコストに厳しいトヨタはいかにしてさらなるコストダウンを図ったのでしょうか。