少ない人員でより大きな成果を

トヨタは毎期のように原価改善をしています。トヨタのwebサイトの「投資家情報」では、決算説明会のプレゼンテーション資料が公開されています。「2016年3月期決算説明会プレゼンテーション資料」の「連結営業利益 増減要因」によれば、連結営業利益2兆8539億円のうち、「原価改善の努力により増えた営業利益」が3900億円にも上りました。2015年3月期は連結営業利益2兆7505億円のうち、原価改善により増えた営業利益は2800億円となりました。

原価改善の具体的な方法は明記されていませんが、従業員の生産性を上げたことが、その理由として推測できます。有価証券報告書をもとに、直近5期分の正社員1人あたりの売上高および1人あたりの当期純利益を試算すると、増加の一途をたどっていることが分かります。1人あたり売上が5702万円から8141万円へと上昇し、1人あたり利益も87万円から663万円まで大幅に上昇しました。

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【上】トヨタ自動車 1人あたり売上高。【下】トヨタ自動車 1人あたり純利益。

製品の販売単価は大きく変わっていないため、これはより少ない人数で生産販売できるような仕組みをつくったことを意味しています。具体的には生産ラインを見直し、機械を導入したり新技術を取り入れたりすることで時間短縮を図っているのだと考えられます。

参考までに、日産、ホンダについて試算すると、2016年3月期における1人あたりの売上高は日産7997万円、ホンダ7006万円であり、1人あたりの当期純利益に至っては、日産344万円、ホンダ165万円です。特に、1人あたりの当期純利益で、トヨタが、日産、ホンダに大きく水をあけていることが分かります。

次に、材料費を減らしたことも考えられます。車の生産台数について、有価証券報告書の【生産、受注及び販売の状況】によれば2012年3月期の743万台から2016年3月期にはで857万台と15%以上も増加しています。そのため「規模の経済」を生かして調達先とのコスト交渉がしやすくなります。また、調達先と一体となり、製品の企画の段階でより材料費を抑えたような設計を考えるといった工夫も考えられます。

さらに、販売台数が増えればその分だけ利益も増え、固定費が一定だと考えれば売上が伸びれば伸びるほど利益率も高まります。販売台数は2012年3月期の735万台から2016年3月期では868万台と18%増です。販売台数がどんどん増えていますので、その分利益も増えやすいのです。