一人一人を理解することの大切さ

乳幼児期は、言葉を話せない時期から始まります。自分の気持ちや意思を表現できるようになるまで、子どもは「伝えたい」一心で一歩一歩発達を重ねていくのですが、その間、理解しようと耳を傾けてくれたり、指差した先を見て言葉に置き換えてくれたりする大人の存在が大きな助けになります。

言葉だけではありません。乳幼児期はいろんなことが次々にできるようになっていく発達著しい時期ですが、実は発達の個人差・月齢差、つまりクラスの中の「できる」「できない」の差も大きいのです。そこで、一人一人の発達を理解し、寄り添ってくれる保育のあり方が重要になります。

保育園の集団生活は、食事、トイレ、着替え、お昼寝などのメニューが多く、3歳くらいまではかなりの部分を保育者が援助しますが、保育者が子どもの発達を理解できていなかったり、忙しくて余裕を失っていると、「できない子ども」につらく当たってしまいがちです。その子どもにとっては「まだできない」のに、「できない困った子」という扱いをしてしまうのです。これは、子どもの自信や自尊心の育ちにとっては痛手です。

通常、認可保育園では発達を見通した指導計画を立てて、実施した保育が適切であったかどうか振り返りをしながら、保育を軌道修正していくことになっていますが、そのためには、保育士の専門性と子どもを見る目がしっかりしていなくてはなりません。

見学では、午前中の遊びの時間しか見られない場合が多いと思いますが、そんな中でも、保育者が子どもに合わせた対応をできているかも見てみましょう。

・子どもが泣いたときなど、子どもがどうしたいのか聞き取り、理解しようとしているか
・クラスの中で遅れがちな子どもが自分でやろうとする意欲を大切にしているか

少し高度な着眼点になりますが、これらも保育を見る重要なポイントになります。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』『共働き子育てを成功させる5つの鉄則』(ともに集英社)、保育園を考える親の会編で『働くママ&パパの子育て110の知恵』(医学通信社)、『はじめての保育園』(主婦と生活社)、『「小1のカベ」に勝つ』(実務教育出版)ほか多数。