糖質制限や、コールドプレスジュース。ダイエットやデトックスなど「体」に関しては、私たちはさまざまな方法にトライします。では、「心」や「気持ち」をスッキリさせたい時には? 答えは「禅」の教えにありそうです。変化の必要性を感じている人に読んでほしい本の紹介です。

突然ですが、1つ質問をします。「あなたはきれい好きですか?」

大多数の人は「自分ではそう思うけど、他人から見たらどうかな?」と困ってしまうかもしれませんね。では、もっとシンプルに「自分の机を見てきれいだと思いますか? パソコンのデスクトップは整理整頓されていますか?」という問いではどうでしょう。

『考える前に動く習慣』(桝野俊明著/三笠書房刊)

現在多くの企業が、一日の仕事が終わる時、“机の上に何も置いていない状態にして帰るように”という指示を出していると聞きます。身辺を整理整頓することにどんなメリットがあるのでしょう。ひとつ、ずいぶん昔にテレビで見た、あるお笑い芸人さんの話を紹介しましょう。

彼の部屋にテレビのカメラが入りました。過激な発言や、負けず嫌いな性格、バイク事故などを起こした彼の部屋は、その芸風からは想像できない、ちり1つないきれいな部屋でした。

彼は言いました。「芸風からしてハチャメチャな部屋、散らかっている方が笑いをとれると思いましたが、残念ながら(笑)これが僕の部屋です。子供の時から散らかっているのが嫌いで、常にきれいな状態にしています。パソコンのデスクトップも整頓されていないと気持ちが悪くて駄目なんです。部屋やデスクトップの状態って、その人の頭の中と同じだと思っていますから!」

身辺が整理されていれば、頭の中も澄み渡り、秩序だって考えることができる。この芸人さん、誰に教えられることなく、本書『考える前に動く習慣』を実践していたのです。

やがて彼の人気はブレイク。漫才、コント、役者、司会、エッセイの執筆と活躍していきます。整然とした部屋やデスクトップ、頭の中を常にクリアな状態にしているからこそ、彼の冴えわたった表現活動が続いているのではないでしょうか。

部屋をきれいに保つ、整理整頓する、ということに理由や期限はありません。「まず動く、そうすれば何かが変わる、何かが始まる。」――本書はこの言葉から始まります。

著者の桝野俊明氏は、曹洞宗徳雄山建功寺住職であり庭園デザイナー、さらに多摩美術大学環境デザイン学科教授と、多方面で活躍する人物です。庭園デザイナーとしての主な作品に、カナダ大使館、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園、ベルリン日本庭園などがあり、国内外から高い評価を得ています。

多方面で実績を残すそんな人物が書いた本には、実は、“特別なこと”は全く書かれていません。実にシンプルに、しかし深く腑に落ちるように、「すぐに動く」こと、「考える前に動く」ことの大切さが説かれているのです。