保護者も保育士もへとへと

保育士資格を持つ人が保育士としての就業を希望しない理由の一位は「賃金と希望があわない」という給与の問題、三位は「休みが少ない、とりづらい」という労働時間の問題がありました。

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【上】資格を持っているのに保育士になりたくない理由は?【下】処遇が上がれば、辞めにくくなる効果も《毎年4.9万人が保育士となるが、その7割弱である、3.3万人が離職している。(平成25年社会福祉施設等調査(厚生労働省統計情報部)》

長時間労働の職場の保護者に合わせて、保育士自身が長時間労働をしていることも問題です。2位の「体力面」での問題は、保育園探しに奔走する親も「へとへと」なら、保育士自身も「へとへと」な状態で働いていることを意味します。

保育士を「結婚、出産前の女性が自分の時間、やる気、体力の資源を無限につぎ込んで働く」ことが前提の「結婚前の若い女性向けの低賃金の仕事」と位置づけている限り、この問題は続きます。

それではどうしたら、保育士が増えるのか? 「就業を希望しない理由が解消したら」、保育士になりたいという人が6割もいます。

保育園反対運動には、総理がメッセージを!

境治さん(コピーライター/メディアコンサルタント)は、保育園反対運動についての見解を報告し、「反対する人びとは言い出したことに依怙地になり、取りつく島がなくなってしまっている。必要なのは、上からの大きな声。与党や政権から「保育園がまったく足りないので理解してください」と反対側に呼びかけてほしい。安倍首相が国会で胸を張って「反対している皆さん」と呼びかけたり、反対運動の町に国会議員が行って話をするべき。そうしないと絶対に解決しない」と提言しています。

その会の後に開催された一億総活躍国民会議のテーマには「保育士の処遇改善」が入り、民間議員のプレゼンの中にも「処遇改善のための当初予算を増やすべき」という提言が盛り込まれていました。

私も、「処遇改善しないと子どもの安全、命にかかわる」という提言をし、さらに境さんがおっしゃっていた総理からのメッセージを要望しました。こちらは予算がかからないことで、すぐにできるからです。

「ぜひ『保育園反対運動』の高齢者の方たちに『保育園が必要であること』を総理からメッセージを送って、子ども歓迎の風土を醸成していただけるようお願いいたします」

会議の最後のスピーチで安倍総理は、「保育士の処遇改善については、新たに2%相当の処遇改善を行うとともに、キャリアアップの仕組みを構築し、保育士としての技能・経験を積んだ職員について、競合他産業との賃金差がなくなるよう処遇改善を行います」と表明しました。