1990年代以降は“読者の悩みに寄りそう作品”が続々

1990年代以降、日本経済は低成長時代に入りました。産業は成熟化し、モデルも見当たらない。先が読めない不透明感に人々は焦りを感じています。そんな時代をうけ、経済小説の作家たちも、読者の悩みに寄りそう作品を多数生み出しています。

たとえば、若手社員が職場に慣れる頃に直面する、モチベーションの低下。『やってられない月曜日』と『今夜も残業エキストラ』は、いずれも20代のヒロインがマンネリから脱却し、労働意欲を取り戻していく物語です。

「昇進」にともなう苦悩を描いたのが『スコールの夜』。男性中心の金融界に生きる女性の物語で、働く女性の世代間ギャップも描かれています。

「降格」によって自分といかに向き合うかという問題もありますね。『辞めない理由』のヒロインは降格後、自分の思わぬ欠点に気づき、チームワークの大切さに目覚めます。

「リーダーシップ」を強引に求められたらどう対処するか。これも働く女性にありがちな悩みです。『編集ガール!』は、社長の鶴の一声でファッション誌の編集長になってしまった女性の話。異なる意見がぶつかるなかで、リーダーはどのようにふるまうべきかという普遍的なテーマが丁寧に描かれています。

「起業」や独立を考えている人には、モデルが実在する『風のマジム』がおすすめです。派遣社員として働いていた女性が、沖縄でラム酒づくりを始め、ブランドに育てていく話です。ベンチャー企業の難しさややりがい、求められる資質がよくわかる作品です。

「経営者」として事業を立て直すという状況はなかなかないかもしれませんが、『ローカル線で行こう!』は、組織の活性化に興味がある人に読んでほしい作品。女性社長の力でローカル線が再生される痛快なストーリーです。

「仕事と子育ての両立」は、ドラマ化もされた『書店ガール』に描かれています。夫や子どもとの関係、家庭と仕事の両立に加え、仕事への取り組み方、売れる棚作りの方法など、書店をめぐるあらゆる要素が出てくる本です。

「親の介護」は働く女性ならずとも、深刻なテーマです。『七十歳死亡法案、可決』は専業主婦が主人公で、経済小説とは違うのですが、誰にでも降りかかる可能性があるテーマなので、あえてとりあげました。

ヒロインが思いきって外で働くようになり、自分が本来持っていた能力を見いだしていくという「救いのある物語」です。

大きな悩みを前に、創意工夫を重ねながら、モチベーションや生きがいを見いだしていく経済小説・お仕事小説のヒロインたち。それぞれの物語のなかに、あなた自身の問題解決のヒントを見つけてください。