一戸建ての実家を畳む、その前に
~どう活用できるかを分析しよう

ここからは主に一戸建てを中心に、実家の畳み方・その対処法を見ていこう。

住む人がいなくなった住宅を考える際に大事なのは、不動産は非常に個別性の高いものであるという点。隣り合って建っていても建物の状態によっては貸せたり、貸せなかったりする。また、同じ区画内に立地していても接道の有無で売れなかったり、建て替えられないこともある。そのため、自分の実家がどういう状態にあるのかを把握することが最初にやるべきことである。

■現状把握その1~立地

最初のポイントは立地。一般に首都圏などの三大都市圏、政令指定都市レベルの街や地方都市でも中心部近くであれば売買、賃貸のニーズが高く、対処方法も多く考えられる。だが、首都圏でも駅から遠い場所であれば賃貸は難しいし、ましてや地方都市の中心部以外や農村・山村のように、不動産の取引自体があまり活発ではない場所では売買、賃貸ともに通常のやり方では難しく、そもそも売れない、貸せないことすらある。それを知るためには周囲の不動産取引の状況、不動産情報などをチェックし、どのような立地であるかを知ることである。

■現状把握その2~建物の状態

同時にチェックしたいのは建物の状態だ。物理的に建物として人が住める、貸せるかということに加え、建築物として適法であるかどうかもポイントだ。これは主に都市部での問題で、農山村部ではあまり気にしなくてもよい。注意すべきは4メートル以下の道路に面している、周囲の建物に比して家が大きく、購入後に増築されたなどの物件だ。

違法、既存不適格の建物にはローンが下りないため、建物があるままでは売ることができない。取り壊しても、接道面の条件を満たしていない場合には新築できない、あるいは容積率などがオーバーだった場合には既存建物より小さな建物しか建たない、となると売れなくなってしまう。

このあたりは素人では分かりにくいので、購入時、建築時に受領したはずの確認申請兼確認済証および検査済証などを用意した上で、不動産会社に相談してみるのが現実的だ。建物の状況をホームインスペクター(主に建物の住宅診断をしてくれる専門職)に調査してもらい、合わせて法令上の瑕疵(かし)がないかについても意見をもらうという手も考えられる。ただし、こうした書類が残されていない、そもそも申請しなかったという例も多いので、早い時期に親に聞いておくことが大事だ。

●住宅の現況を調査してくれる専門家
内閣府認証NPO法人 ホームインスペクターズ協会
中川寛子
東京情報堂代表、住まいと街の解説者、日本地理学会会員、日本地形学連合会員。
住まいの雑誌編集に長年従事。2011年の震災以降は、取材されることが多くなった地盤、街選びに関してセミナーを行なっている。著書に『キレイになる部屋、ブスになる部屋。ずっと美人でいたい女のためのおウチ選び』『住まいのプロが鳴らす30の警鐘「こんな家」に住んではいけない』『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など。新著に『解決!空き家問題』(ちくま新書刊)がある。