「住宅ローンの変動金利は短期プライムレートに連動する」と説明されることが多いが、現実は違っているようだ。ファイナンシャルプランナーの松岡賢治氏は「短プラの変更がなくても、変動金利が上がるケースが続出している。『金利のある世界』で変動金利がどう決まるかを理解しておいたほうがいい」という――。
家の模型とコイン
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9月からメガバンク、地銀が続々と「短プラ」を引き上げ

日銀が金融政策の引き締めモードへと突入してから、住宅ローン金利の上昇が鮮明となっている。特に、足元では、住宅ローンを借りている人の約8割が利用しているという変動金利型の金利上昇が顕著だ。

7月末の金融政策決定会合で、日銀は政策金利を0.15%引き上げて0.25%とした。それを受け、まず三菱UFJ銀行が短期プライムレート(以下「短プラ」)を、9月から政策金利の引き上げ幅と同じく0.15%上げて1.625%にすると発表。ほどなく、三井住友、みずほのメガバンク2行も同様に短プラの引き上げを決め、それ以降、地方銀行が続々と追随することとなった。

こうした状況を受けて、「短プラに連動する住宅ローンの変動金利はどこまで上がる?」といった記事が、現在でも多く散見される。しかし、この手の説明は、ここ数年で変動金利型ローンを借りた人にとっては、あまり参考にならないケースが多いのではないか。

その理由は、ほとんどのネット銀行は、住宅ローンを短プラ連動型ではなく、独自に決めているからだ。背景には、これまでネット銀行の変動金利は圧倒的に低く、他の銀行は選択肢にすら入らない、という状況が続いてきたことがある。

ネット銀行は短期金利の動向が大きな影響を与える

大手ネット銀行は、どのように変動金利を決めているのか。各行ごとに、基準とされているものを、ホームページや決算資料でチェックしてみた。

【図表1】ネット銀行の住宅ローンの変動金利の基準
筆者作成

大手ネット銀行5社に限っていえば、変動金利を短期プライムレートに連動させているのは住信SBIネット銀行しかない。なお、「TIBOR(タイボー)」とは、東京銀行間取引金利のことで、銀行同士で取引される期間1年以内の金利(実際は気配値)を指す。「無担保コールレート」とともに、代表的な短期金利の指標として機能している。

また、PayPay銀行やauじぶん銀行は「市場の金利情勢」となっているが、ここでいう「金利情勢」とは短期金利である。つまり、PayPay銀行、ソニー銀行、楽天銀行、auじぶん銀行は、実質的に短期金利の動向に大きな影響を受ける、といえる。