なぜ今回に限り「擁護派」がいるのか?

この違いは何なのだろう。芸能人の不倫や、政治家の金銭授受問題、元野球選手の薬物問題、イクメン議員の不倫など、これまでの文春砲炸裂案件では、“擁護”や“情け”といった論調は起こりにくかった。明らかな犯罪である場合は、背景をおもんばかる人がいるくらいで世間は擁護しない。不倫などは本来は完全に当事者たちの間の問題なのだが、それが社会的に影響力のある人たちで商業的に巻き込まれた人々も多かったため、社会的道義や感情的な自己投影で逆なでされ、許せないと叩く向きのほうが多数派。「まあまあ」となだめる人はいても、“擁護派”はやはりいなかったと思う。

私は、ショーンKの件を知って「いやぁ、これはビョーキだよねぇ……」と精神的な問題を色濃く感じたクチである。コンプレックスの強さとサイコパスな行動と、どちらが鶏でどちらが卵なのかは分からないけれど、詐欺師とはサイコパスの一つであり、精神病というよりはパーソナリティー障害である。実際、社会的な成功者にサイコパスが多いのも有名な話だ。整形までして外国人をかたったと聞いて、とっさにクヒオ大佐の結婚詐欺事件を思い出したが、あまりに昭和すぎて「よくそんな古いの覚えてるなぁ。さすが本当は50代のくせにアラフォーと言い張る年齢詐称」と家族に笑われた。いや、ホントに40代だし、最近は分をわきまえてアラフォーって言い張ってないからほっとけ!

詐欺師はパーソナリティー障害

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クヒオ大佐結婚詐欺事件とは、1970年代から90年ごろにかけて「アメリカ空軍パイロットでカメハメハ大王やエリザベス女王の親類」と名乗り、結婚話を交際女性に持ちかけ、約1億円を騙し取ったというもの。堺雅人さん主演、松雪泰子さんや満島ひかりさん共演で映画化されている。

そう、クヒオ大佐も後年映画化されたほど荒唐無稽な事件だったが、詐欺師はパーソナリティー障害である。だから、ショーンKが身につけていたものを次々と剥がされて、真っ裸の“川上伸一郎”としての姿を晒されているのを見ると、憤りではなく哀れを感じてしまうのだ。「ありのままの自分を好きになれなかったんだなぁ、自信がなかったんだなぁ、そんな人生苦しいだろうなぁ、気の毒になぁ……」と。

しかもよくよく調べると、結構な努力家なのである。本物のハーフFMナビゲーターたちに肉薄するような流暢な英語の発音は、純日本人としてはかなりの努力の結晶だ。シリアスで精悍(せいかん)な印象を与える眉間の深いシワまでが、常に眉間に力を入れる彼の不断の努力の賜物と聞き、いつもギスギスと険のある表情をしているがゆえの自分の眉間の縦ジワを「これ以上私がシリアスで精悍そうになってしまう前にやめよう」と深く反省するのである。