「経営の神様」の人間性に共感

一方で、いくつになっても向上心を持ち、仕事や人生を豊かにしようと学び続ける女性たちもいる。PHP友の会が主催する40代以上の女性向け「松下幸之助オトナ女子会」。経営の神様といわれる松下幸之助の魅力を、彼女たちはどう感じているのだろうか。

第2回 松下幸之助女子会in東京/主催:全国PHP友の会(今後の活動に関するお問い合わせはこちら→syakai@php.co.jp)

40代以上のオトナ女子向けという名目通り、参加者は40代から80代までと幅広く、復職を考える主婦から経営者の妻まで立場はさまざま。しかし共通しているのは「もっと学び、豊かに生きたい、そして語りたい」という並々ならぬエネルギーだ。

自己紹介から始まった会は、ミニセミナーを挟みつつ、500万部を超える松下幸之助の代表作『道をひらく』から「道」「縁あって」の2編のうち、どちらが今の自分に響いたかを語る読書会に。ある女性は、公私ともに人との関わりで生かされているとの思いが年々強くなっているため「縁」を選択。またある女性は、家族の都合で自分の長年の仕事を辞めた経緯から「道」を選択。「くやしい思いが湧いたとき、自分に与えられたものなのだからと気持ちを切り替え、今まさに新たな道を進み始めている」と語った。

参加者の一人に松下幸之助の魅力について聞いてみると、「経営者としてのすごさだけでなく、人を大切にし、社会に還元しようとする姿勢に、人格者としての素晴らしさを感じます」と教えてくれた。利益だけを追うのではなく、その先の人や社会など“他者”を忘れない経営論は、仕事だけにとどまりたくない彼女たちの価値観に合致しているのだといえよう。

そして、松下電気器具(現・パナソニック)のもう一人の創業者といえる妻・むめのさんの話になると、「どの書籍に詳しく書かれているのか?」

「実際どんな人だったのか?」などと質問が飛び交い、偉大な経営者を支えた女性に、同じ女性として強い関心があることがうかがえた。

年を重ねるとともに、自身の生き方について深く語る機会は少なくなっていく。だからこそ、松下幸之助を通じて、時間めいっぱい自分の考えを語り、そして周りの人の話から刺激をもらおうという意欲的な幸之助女子たち。解散後はその日知り合ったにもかかわらず、「話し足りない!」と笑顔でお茶会になだれ込む人もいるほどだった。

ドラッカーも松下幸之助も、ビジネス書でありながら「人間がどうあるべきか」ということを重要視している。松下幸之助女子会に参加した女性は「結局自分が変わらないと、周りの人も変わらないし、立ち止まると自分の世界が煮詰まってしまう」と、生涯現役で学び続ける大切さを語ってくれた。

ビジネス書は目の前の仕事のためだけに読むわけではない。周囲の人との接点も楽しみつつ自分の人生を豊かに生きていきたいと考える女性にとって、ビジネス書やこうした読書会が自分の殻を破るきっかけになりそうだ。

撮影=遠藤素子、加藤 梢