交渉を始める前に、取引材料を整理する

職場での例として、同僚数人のグループ内で、仕事の分担を決めなければならない場面を考えてみましょう。上司は、そのグループのメンバーである部下たちに、グループとしてその仕事をどうこなすかを任せています。グループのメンバーはこんな女性たちです。

Aさんは、小さい子供を抱えており、定時になると退社しなければなりません。でも、Aさんはスペシャリストであり、仕事のある部分については鍵を握る重要な人材です。

Bさんにはもう少し大きくなった子供たちがいます。子供たちは放課後にスポーツや地域での活動などに参加しており、ママが帰宅してからの夜の時間はかまってもらいたいし、週末の試合は観戦に来てほしいと思っています。Bさんの知識や経験はさまざまな場面で有効に生かされています。Bさん自身、さらにキャリアアップしようと最近決めたところです。

Cさんには子供がなく、夫は夜遅くまで仕事をしています。その代わり朝は比較的ゆっくりと過ごす生活スタイルです。Cさんは勤務時間外に、ある組織の立ち上げのために忙しく活動しており、そこにかなりのエネルギーを注ぎ込んでいます。

これら3人の女性たちは、利害が異なり、スキルや能力も違っています。彼女たちにはそれぞれ志や夢があります。こういった背景は全て、彼女たちがなんらかの業務を担当する際に、どう感じるかということに影響するでしょう。

仕事の分担の交渉は、まず、達成しなければならない仕事の全体像を把握することから始まります。次に、それぞれがどの業務を担当するか、どの時間帯に働くかを選ぶ必要があります。その際に互いのギャップがどこにあるのかが明らかになります。

一番人気がないのはどの業務でしょうか? また、勤務時間はどうでしょう? みんなが嫌がる業務を割り振るという困難に直面したら、個別のニーズや利益を考慮して、それぞれに合ったプランをデザインすると同時に、そのやり方で、グループが与えられた仕事の全てをカバーできるかどうかを見極めることが重要です。