人生の収支予測から予算を設定、
ファイナンシャルプランナーの知恵で賢明な購入を

これらのローン破綻リスクを回避するために、お勧めしたいのはお金のプロであるファイナンシャルプランナーの利用。住宅購入を考える時、たいていの人は現在の年収から買える家という考え方をする。安全な買い方だからと頭金をできるだけ入れてと考える。だが、近い将来に大きな出費があるのなら、現金は手元に残しておいたほうが良い場合もある。独立する計画があり、収入が不安定になる時期が生じる可能性があるなら、現在の年収で払える額にしておかないほうが安心かもしれない。

そのように住宅購入は本来、家庭によって異なる戦略で臨むべきもの。安心して買いたいなら、買う物件を決める前に人生の収支予測を考え、その予算から購入物件を決めるべきなのだ。ところが、モデルルームでの試算はそうした個別要因は考慮しない。多くの人はまずモデルルームに行ってその気になり、人によっては契約してしまってからプロに相談する。だが、車や洋服を買いに行く時にはおおよそでも予算を決めてから行くだろう。そう考えると、住宅を買う多くの人の行動は順番がおかしい。それがどんなものであっても、まず予算、そして次に買うものとなるべきなのだ。

ちなみにファイナンシャルプランナーの相談料は1時間1万円~。家計や保険なども同時に見直してもらえるので、それだけでもあっという間に元は取れる。

もうひとつ、お勧めしたいのは50歳、55歳、60歳時点の自分、配偶者の姿を冷静に考えてみること。例えば、ずっと同じ会社に勤めているとして、それぞれの年齢時の給料や待遇、役職などがどうなっているか。社内の現状から考えればおおよその姿は想像できる。そこで「なんとかなる」と思えるか。家族の状況も合わせて考えると、冷静な判断ができるはずだ。

中川寛子
東京情報堂代表、住まいと街の解説者、日本地理学会会員、日本地形学連合会員。
住まいの雑誌編集に長年従事。2011年の震災以降は、取材されることが多くなった地盤、街選びに関してセミナーを行なっている。著書に『キレイになる部屋、ブスになる部屋。ずっと美人でいたい女のためのおウチ選び』『住まいのプロが鳴らす30の警鐘「こんな家」に住んではいけない』『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など。新著に『解決!空き家問題』(ちくま新書刊)がある。