35歳過ぎの購入が家計を圧迫
「ライフイベント」の重複と「老後不安」

35歳、40歳と年齢が高くなってからの購入にも危険がある。一般に住宅購入のきっかけになるライフイベントとしては結婚、第1子出産、第1子小学校入学があるが、初婚年齢の上昇とともにそのいずれもが遅くなっている。

内閣府の少子化社会対策白書 (旧少子化社会白書、平成25年度)によると、日本人の平均初婚年齢は平成23年時点で男性30.7歳、女性29.0歳。30年前に比べ男性が2.9歳、女性は3.8歳上がっている。当然、子供の誕生もそれに連れて人生の後半にスライド、平成23年の人口動態統計月報年計(概数)の概況によれば30.1歳だ。

都会のほうが初婚、第1子出生時の年齢が高く、さらに夫が妻よりも年上の可能性が高い。そう考えると、多くの家庭でそうであるように、住宅ローン契約者が夫だった場合、ローンのスタートが30代も半ばというケースは多々あり得る。

住宅ローン開始が遅いと、いくつか不都合が出てくる。2つのケースを紹介しよう。

(1)ローンの返済期間が限られ、それに伴って月の返済額が増える
現状の住宅ローンは一般に最長で35年(一部に債務継承型として50年もある)。だが、30歳で35年なら65歳までだが、35歳で35年で組むと完済時は70歳。今後、定年延長等があり得るとしても、ローンを返し続けるのは収入面から難しくなる懸念がある。ましてや、年金があてにならないこれからの時代に、年金生活になってまで返済が続くのは現実的ではない。とすると、定年までには返しておきたいわけで、それを考えるとローン開始が30歳か、35歳かの差は大きい。遅くなればなるほど安全に返せる期間は短くなり、期間が短くなるほど毎月の返済額も増えることになるのだ。

(2)返済期間が短くなると、ローン以外の大型出費(教育費や老後資金の備え)で不都合が生じる。
例えば35歳で第1子が生まれ、同時に住宅を購入するとした場合、子供の大学卒業までの間に教育費その他がかかる。大学卒業の22歳までそうした支出があるとすると、その時点で世帯主は57歳。そこから定年までに老後資金を貯めるとしたら、残りは何年あるだろう。30歳時点での購入に比べ、5年間短くなっている不利は否めない。住宅ローン自体は多くの金融機関で79歳(!)まで借りられるが、買うつもりがあり状況が許すのであれば、住宅ローンは早めに組んだほうが、人生の他の支出とのバランスをコントロールしやすくなる。

しかも、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を見ていくとどの業種においても賃金が最大化するのは男性で50代前半、女性で40代後半。老後資金が貯められる年齢になった時点ではすでに賃金ダウンが始まっている可能性もあるのだ。ただ、返済期間が短いほど、総返済額は減るというメリットもあり、短期に集中して返す戦略もないわけではない。