「和綿」で紡ぐ福島産オーガニックコットン

茶色っぽい綿の風合いが特徴の、日本原産種「和綿」。収穫量が少なく稀少だ。

2013年にスタートした「いわきおてんとSUN」は、オーガニックコットン事業、コミュニティ電力事業、スタディツアー事業の三つの柱を持った企業組合。その中のオーガニックコットン事業は、福島の農業再生と地域活性化に向けた新しい取り組みだ。

コットンと聞くとナチュラルなイメージがあるが、世界の綿花栽培の現場は、実は過酷な環境にある。大量の農薬が撒かれ、土壌汚染もあり、栽培農家の人々の健康に被害が出た例は後を絶たない。

そもそも綿花栽培は、『アンクル・トムの小屋』や『風と共に去りぬ』で描かれていたように、奴隷労働によって、大きな産業に発展した歴史がある。現代の安価で取引される綿花を材料にしたコットン生地は、農薬によって作る人や環境に負荷がかけられたものと考えたほうがいい。

そうした農薬によるさまざまな負荷を、可能な限り減らしたクリーンなコットンが、オーガニックコットンだ。

「いわきおてんとSUN」の事業は、農薬を大量に使用しないで済む、塩害に強い日本在来種の「和綿」を栽培し、布地生産、製品化まで手掛けるプロジェクトである。文字通り、種からの"メイドインジャパン"で、福島に雇用と産業を生み出し、国産のオーガニックコットンを福島から発信するという志で、事業に取り組んでいる。

【写真上】「いわきおてんとSUN」代表理事の吉田恵美子さん【写真下】同、オーガニックコットン事業部の酒井悠太さん

とはいえ、納得のいく高品質のオーガニックコットンは、そう簡単に作れるものではない。まだまだ、生産量が少ないのが現状だ。そのため、大量生産ビジネスに対応するのは難しい。一方で限られた貴重な原料を安価で提供するわけにもいかない。

これまでもノベルティの発注などはあり、それもうれしい反応だったというが、生産量と価格がネックとなって、商品化にこぎつけた例はなかった。だから、ラッシュジャパンからの誘いも、最初は「本当に実現するのかな」と半信半疑だったという。

そう考えると、700円の価格設定はリーズナブルだが、この価格が実現できたのには秘密がある。貴重な福島産の「和綿」を5%、アメリカ産オーガニックコットンを95%といった配合にしたのだ。

気軽に買えるKNOT WRAPが、未だ復興途中にある福島への思いや、環境にやさしいコットンについて考えるきっかけになる。持って楽しいファッショナブルな柄の商品になったのも、インパクトのあるデザインが得意なラッシュジャパンならではの「貢献」だろう。