遺言を作成すると気持ちが晴れやかになる

晴れて2通の遺言ができあがったところで、夫が部屋に戻りました。そのとき、ご夫婦とも心から本当にホッとされている様子でした。お互いの顔を見合わせ、「間に合ってよかったね」ともいっていました。その場で公証人に合計20万円弱の手数料を現金で支払い、司法書士にも10万円の手数料を支払いました。残す財産に比べ、そんなに高額なものでもないな……と思いました。(表参照)

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公正証書を作成するための公証役場に支払う基本手数料

私はのちに司法書士からご夫婦からの御礼として1万円をいただきました。「公正証書遺言」の証人はその場限りで、後々の役目は何もないそうです。

「公正証書遺言」の作成に立ち会った私の感想としては、自分の意志で財産を分けられる遺言はやっぱりすごい、いい制度だなぁと思いました。また、法的に認めてもらう書類作りはけっこう厳しく、なあなあでは作ってくれないのだなぁと感心しました。

後日、公証人ってどうやってなるのかを調べてみると、公証人とは法律の専門家であり、公証役場は「公証」をする国家機関であるのですが、一人一人は個人事業主です。公証人は、裁判官、検察官、弁護士、法務局長や司法書士など長年(30年ぐらい)法律関係の仕事をしていた人の中から法務大臣が任命するそうで、どなたも大ベテランです。お話しをしてわかったのですが、今回の公証人は元裁判官でした。

このあと、老人ホームのカフェでご夫婦とお話をしました。夫は元高校の先生で、妻はキャリアウーマンの走りだったそうです。「遺言を作ると長生きをする」と、ご夫婦は口をそろえておっしゃっていました。親類やホームにいる友人も遺言を作成しているそうです。イキイキとしているお顔をみて、私は確かに胸のつっかえが取れると長生きできるかもと思いました。いろいろお話を聞いているうちになんだか私も胸がいっぱいになり、最後には記念写真を撮らせていただきました。

ご夫婦は高齢ではありますが、どこも悪いところはなく、食欲もあり、健康だそうです。元気なうちに自分の死後をきっちり整え、遺言執行人を定め、さらにお墓を購入し、戒名まで決めて遺言に記したご夫婦を、私は心から尊敬しました。

誰しも、いつ万が一のことが起きるかわかりません。遺言は財産の大きさにかかわらず、残される家族へのメッセージになります。私も、まずは「自筆証書遺言」を書こうと本気で思いました。

マネージャーナリスト 坂本君子(さかもと・きみこ)
広告代理店、出版社にてサラリーで働くエディター、ライター、プランナー、コピーライターを経てフリーに。得意分野は投資、住宅関連。大ブレイクはしないけれど、仕事は堅実でハズさない。満を持して2008年に起業。個人投資家としての投資歴は15年選手(ちょっぴりプラス)。