夫婦一人一人が遺言を残すのがベター

今回、「公正証書遺言」を作成するご夫婦は同い年、昭和7年生まれの84歳で、神奈川県の老人ホームに夫婦でお住まいです。遺言の草案は私の友人の司法書士に依頼をしました。ご夫婦と司法書士の出会いは2年前に行われた老人ホームの遺言セミナーだったそう。最近、親類から「まだ遺言を書いていないの?」と何度か心配され、人のよさそうな司法書士の顔を思い出したそうです。

ご夫婦には長男と次男がいます。次男には知的障がいがあり、現在グループホームで簡単な仕事をし、多少の収入があります。遺言に記す財産の分け方は夫の遺言、妻の遺言とも同じで、全財産のうち3/5が配偶者、1/5が長男、1/5は次男というものでした。遺言には「付言」というメッセージを書くことができるのですが、ご夫婦それぞれの付言は、お墓のありかと、ご自身の戒名でした。

資産家のご夫婦ですが、どちらか一方が亡くなった場合、まずは残された配偶者が生活に困らないよう十分な財産を残し、その時点で、もう一度、遺言を書き直し、2回目の遺言はこの先の生活が心配な次男へ多めに財産を残す方法です。今回の遺言で次男へ多めの割合にしないのは、残される配偶者の今後の生活の不安もありますが、長男の思い通りにさせたくないという意思もあります。いきなり次男の割合を多めにするのは長男が反発する可能性があるため、このように夫婦一人一人が遺言を残し、その後、どちらかが亡くなったら、残された配偶者はもう1回遺言を書き直すという2段階の方法はよくあるそうです。