14年の1年間に約14億6000万円の寄付を集め、ふるさと納税額第1位となった長崎県平戸市。3カ月待ちも出ているほど、海の幸が大人気だが、この人気には仕掛けがある。

イラスト=Yooco Tanimoto

「ふるさとチョイス」などのポータルサイトでクレジットカードを使って寄付をすると、ネットショッピングさながらに、入力だけで寄付から特産品の申し込みまで一度に完了する。この手軽さが魅力だが、見方を変えれば、寄付者と自治体の縁も1回で終わる。そこで平戸市は、ネットの時代にあえて後日カタログを郵送し、カタログで特産品を選んでもらうことで寄付者との縁をつなぎ、さらにポイント制を導入することで、何度も平戸市に寄付をしたくなる仕組みを作ったのだ。

寄付で収入を増やしたい自治体と“オトク”に反応する個人の思惑が一致して、特産品を送る自治体や特産品の数は増え続けている。ただし、最近では「特産品目当てのふるさと納税は、本来の趣旨とは異なる」という声もある。特産品だけでなく、寄付金の使い道にも注目が集まり、クラウドファンディングを利用した社会貢献や、災害復興の緊急支援も生まれている。関東・東北地方の水害などの災害時にボランティアに行けなくても、ふるさと納税で支援する方法も広がるだろう。

ふるさと納税で動く可能性があるお金は、約2兆円を超える。ただし、実際にふるさと納税を行った人は1%にも満たないのが現実だ。良くも悪くも特産品に反応して認知度が高まったふるさと納税を第一段階とすると、そろそろ自治体の底力をつける第二段階のふるさと納税になることを期待したい。

前野 彩
ファイナンシャルプランナー。安心して、楽しくお金を使うためのアドバイスが専門。近著は『本気で家計を変えたいあなたへ』。