「申告特例申請書」提出すると、翌年の住民税が安くなる?
お肉にお米に宿泊券……などなど、141億円超(2013年)のお金が動いたふるさと納税は、やらなきゃソンと言わんばかりに盛り上がりを見せている。
そもそもふるさと納税は、「納税」という言葉があるものの、基本は「寄付」。地方を活性化させるために誕生した制度であり、出身地に限らず、どの自治体にでも寄付をすることができる。寄付をすることで社会の役に立ち、自治体によっては特産品のお礼がもらえ、さらに税金が安くなるという、一度で3回おいしい制度といえるだろう。
たとえば、移住に力を入れる北海道上士幌(かみしほろ)町は、子育て中の親が気になる教育に力を入れている。そんな上士幌町に1万円寄付をすると、十勝ハーブ牛のステーキや牧場直営店の濃厚ジェラートなどから好きな品をひとつ選ぶことができる。それだけなら1万円寄付をして、自治体からお礼の品をもらえてうれしい(美味しい!)で終了だが、寄付した1万円のうち、自己負担2000円を超えた8000円が確定申告で戻ってくるため、実質2000円で特産品がもらえることになる。さらに、この自己負担2000円は自治体1カ所につき2000円ではない。1月1日から12月31日までに行ったふるさと納税の合計額に対して2000円なので、10個の特産品をもらえば、1個あたり200円という値段で、数千円相当のお肉やお米などを手に入れられるわけだ。
寄付金額の上限はないが、2000円を超える寄付をした場合に控除される税金には上限がある。「自己負担2000円で特産品をもらう」ための寄付の最大金額は、左下の表で確認しておこう。
さらに2015年、確定申告の制度も変わった。2015年の3月31日までにふるさと納税を行った人は、2016年に確定申告をして所得税の還付、2016年の住民税の減額を受けるが、4月1日以降に行ったふるさと納税の寄付分からは、確定申告の必要がない会社員などで、寄付した自治体の数が5カ所までなら、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出すると、確定申告をしなくても自動的に翌年納める住民税が安くなるようになった(所得税分も住民税にて安くなる)。これにより、ふるさと納税人口は確実に増えるだろう。
14年の1年間に約14億6000万円の寄付を集め、ふるさと納税額第1位となった長崎県平戸市。3カ月待ちも出ているほど、海の幸が大人気だが、この人気には仕掛けがある。
「ふるさとチョイス」などのポータルサイトでクレジットカードを使って寄付をすると、ネットショッピングさながらに、入力だけで寄付から特産品の申し込みまで一度に完了する。この手軽さが魅力だが、見方を変えれば、寄付者と自治体の縁も1回で終わる。そこで平戸市は、ネットの時代にあえて後日カタログを郵送し、カタログで特産品を選んでもらうことで寄付者との縁をつなぎ、さらにポイント制を導入することで、何度も平戸市に寄付をしたくなる仕組みを作ったのだ。
寄付で収入を増やしたい自治体と“オトク”に反応する個人の思惑が一致して、特産品を送る自治体や特産品の数は増え続けている。ただし、最近では「特産品目当てのふるさと納税は、本来の趣旨とは異なる」という声もある。特産品だけでなく、寄付金の使い道にも注目が集まり、クラウドファンディングを利用した社会貢献や、災害復興の緊急支援も生まれている。関東・東北地方の水害などの災害時にボランティアに行けなくても、ふるさと納税で支援する方法も広がるだろう。
ふるさと納税で動く可能性があるお金は、約2兆円を超える。ただし、実際にふるさと納税を行った人は1%にも満たないのが現実だ。良くも悪くも特産品に反応して認知度が高まったふるさと納税を第一段階とすると、そろそろ自治体の底力をつける第二段階のふるさと納税になることを期待したい。
ファイナンシャルプランナー。安心して、楽しくお金を使うためのアドバイスが専門。近著は『本気で家計を変えたいあなたへ』。