起業しながら働けるように、会社が制度を変更

【原田】オイシックスに入社されたのはなぜですか?

【西井】仕事でのお付き合いがあり、声を掛けてもらいました。もともと起業するつもりで前職を辞めていたので、転職するつもりはまったくありませんでした。でもオイシックスは「社員の多様な働き方を支援したい」という考え方が徹底していて、私が起業しながら働けるように、制度の方を変えて兼業OKにしてくれた。そうした考え方が面白く、また社長である高島宏平の下で働くのは勉強になると思いました。

西井敏恭(にしい・としやす)さん。オイシックス株式会社 執行役員 CMO、株式会社warmth 代表取締役 CEO。1975年生まれ。各社でEコマースを10 年ほど経験して、2013年末、ドクターシーラボを退社。2014年、warmth設立。現在はオイシックスのCMOとして働きながら、warmthではCMOをアウトソースする事業を展開。大手通販、スタートアップの企業などのマーケティングを支援する。

もちろん、起業は簡単なことではないので、自分の時間を100%投入しないで大丈夫かという不安はありました。でも、こういう普通じゃない働き方が僕らしい。面白い生き方ができるならチャレンジしよう、と思ったのです。それから、オイシックスの成り立ちや考え方、単にもうけることだけを考えているのではない点にも共感するところが大きかったです。

【原田】西井さんはオイシックスに入社する以前から、長くeコマースやマーケティングに携わっていらっしゃいます。マーケティングは一般的に、扱っている商材に近い人の方が、仮説が立てやすいので強いですよね。オイシックスの場合は、おそらくユーザーは女性比率が高いでしょうから、女性マーケターの方がお客様の行動パターンをよく理解していて活躍しやすいのでは?

【西井】確かにそういった面はありますね。オイシックスの“Kit Oisix献立コース”や“ママコース”というサービスを担当するチームは現在、100%女性です。Kit Oisixとは、料理を作りたいけど時間がない、得意ではないけど手作りしたい人に向けた商品です。その献立に含まれる料理を作るのに必要な材料をカットした状態でセット組みして、お送りします。働きながら子育て・家事をしている女性の利用者が多いですね。ママコースは、管理栄養士のアドバイスにのっとって、赤ちゃんの月齢に合わせた離乳食の材料をお送りしています。女性マーケターとしての強みが生かされていると思います。

一方で、マーケティングという仕事は、性別は関係ないとも思うところもあります。僕も前職で化粧品のマーケティングをやっていましたし。

【原田】オイシックスは男女や年齢に関係なく社員が活躍している印象があります。育休中に「1日に1時間だけ」という条件で勤務した社員もいると聞きました。西井さんのケースもそうですが、制度に社員が合わせるのではなく、社員に合わせて会社が制度を作ってしまうこともあるのですね。