テクノロジーの進化により10年後にはなくなる職業が話題になる一方で、今までになかった「新しい仕事」が生まれています。この連載では、リクルートライフスタイルのアナリストであり、データサイエンティストとして活躍する原田博植さんを聞き手に迎え、新しい仕事の領域を切り開くフロントランナーにインタビューを行います。
今回は、有機野菜など安全でおいしい食材の宅配で、ワーキングマザーをはじめ働く女性から熱い支持を得るオイシックスのCMO(Chief Marketing Officer、最高マーケティング責任者)であり、起業家でもある西井敏恭さんに、会社やその制度の魅力、また自身のマインドセットを作り上げた“旅”について聞きました。
難しい生鮮の定期通販を支えるマーケティング
【リクルートライフスタイル 原田博植さん(以下、原田)】オイシックスとはどんな会社か教えていただけますか。
【オイシックス 西井敏恭さん(以下、西井)】「豊かな食卓を、より多くの人へ」という企業理念のもと、食を通じて社会に貢献し、消費者と生産者の両方に、ITを使って先進的な働きかけを行おうとしている会社です。
【原田】生鮮食料品は在庫が持てないため、ネット通販では大変難しい分野の事業ですよね。
【西井】天候や季節などで常に品質が変わりますし、他のネット通販とは違う難しさがあります。しかしオイシックスの場合、特に定期宅配用の野菜だとネットを通じての注文に合わせて収穫できます。ですから、買った人は最もおいしいタイミングで食材が手に入れられますし、生産者側も在庫ロスがなく、捨てられる野菜も減ります。世の中にあまり存在していないタイプのネット通販ですね。
【原田】では、CMO(Chief Marketing Officer、最高マーケティング責任者)である西井さんの役割とはどのようなものですか。
【西井】長期、短期でデータを分析し、お客様に毎週使ってもらえるモデルを考えるのが仕事です。
【原田】お客様はまだ収穫もされていないものに対して、注文するということですよね。信頼関係がないと成り立ちません。そこがユニークです。
【西井】ネット通販、IT企業という感じがしないですよね。実際、すごくアナログで、生産者・ユーザー両方の信頼関係がないと回りません。食品小売業という感じが強いです。
一方で、ITのよさもあります。食品小売の場合、普通のお店では、お客様の情報をなかなか把握しづらいと思います。商品を買った人の情報は多少分かりますが、例えばその人は何回目の訪問で買ったのかまでは分からない。オイシックスの場合は、詳細なデータを持っている強みがあります。