3秒のアイコンタクトで「信頼」が伝わる。では5秒では?

次にアイコンタクトです。アイコンタクトはまず“長さ”の意味を理解してください。図にあるように、相手に「公平に見られている」という意識を持ってもらうためには、1秒以上目が合うことが必要です。1秒以下だと「見ていない。スルーされている」と思われてしまうかもしれません。更に「信頼性」を感じてもらいたい場合には3秒以上、自信を感じてもらうには5秒以上は目を合わせたいところです。

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アイコンタクトでは、目が合う秒数に応じて、聞き手に与えるの印象が変わる。視線を配るタイミングも大切な要素だ。

とはいえ、目が合うとドキドキしてしまって緊張が増す、という人が多いのも事実。聞き手もじっと見られると居心地が悪いという思いをする人もいます。そのような場合には、直接目を見るのではなく、相手の鼻から喉元あたりを見るようにすることで、お互い緊張を高めずに、見られているという意識を与えられます。

参加者全体を見渡す

次に、人から人へアイコンタクトを切り替えるタイミングはどうすればよいでしょうか? まず意識していただきたいのは、プレゼンテーションを開始する時です。この時は、緊張しているとは思いますが、必ず参加者全体をしっかりと見渡してください。そして、切り替えのタイミングとしては、だいたい5秒以上で次の人に移り変わるよう意識しましょう。

狭い会場であれば中央、左、右、というふうに切り替えていきます。広い会場で横長の会場であればMの字で、ジグザグに視線を動かしていきます。さらに広い大ホールなどの場合には、会場を自分の中で9つぐらいのブロックに区切って、それらを8の字で見渡すようにしていくと、会場全体の人が「自分は見られている」というふうに認識してくれます。

プレゼンは練習あるのみ!

「ジェスチャー」と「アイコンタクト」、難しいと感じた人もいるかもしれませんね。プレゼンテーション上達のコツは、残念ながら練習あるのみです。「話すのは苦手」と言いながら、練習やリハーサルをしっかり行なわず、ぶっつけで本番を迎えていないでしょうか?

私は、マンツーマンで「プレゼンクリニック」という駆け込み寺的なサービスを提供していますが、たった1時間程度のリハーサルで見違えるように声が出るようになり、自信を持って話せるようになる人が多いのに毎回驚きます。

この連載でお伝えしてきたテクニックもご存知のものも多かったかもしれません。でも「知っていること」と「やってみること」の間には大きな差があります。この連載でご紹介したテクニックが、皆さんの素晴らしい考えをたくさんの方に届けるための一助となれば、本当に嬉しく思います。ありがとうございました。

清水久三子
お茶の水女子大学卒。大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、数々の変革プロジェクトをリード。
2005年より、コンサルティングサービス&SI事業部門の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEの人材育成を担い、独立。2015年6月にワーク・ライフバランスの実現支援を使命とした会社、オーガナイズ・コンサルティングを設立。延べ3000人のコンサルタント、マーケッターの指導育成経験を持つ「プロを育てるプロ」として知られている。
主な著書に「プロの学び力」「プロの課題設定力」「プロの資料作成力」(東洋経済新報社)、「外資系コンサルタントのインパクト図解術」(中経出版)、「一瞬で伝え、感情を揺さぶる プレゼンテーション」、「外資系コンサルが入社1年目に学ぶ資料作成の教科書」(KADOKAWA)がある。新刊「ビジュアル 資料作成ハンドブック」(日本経済新聞出版社)は1月16日発売。

図版作成= 大橋昭一