経営管理部時代は、衛星電話会社の日本イリジウムへ兼務出向して採算管理や事業計画を担当したり、DDIとKDD、IDOの3社合併にも携わった。その後、渉外・広報本部IR室長、経営管理本部財務・経理の副部長、部長を経て、役員に就任する。
最勝寺さんの失敗はキャリア中盤に集まっている。経営管理部(合併後は経営管理本部)の時代は失敗の記憶があまりないという。
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「小さな失敗はたくさんあったと思いますが忘れてしまいました。経営管理は個人の仕事に対して必ずダブルチェックするので、大事に至ることがないんですね」
ところがIR室長の時代には、ちょっとしたつまずきをたくさん経験したようだ。
「仕事では私、笑わないんです。経営管理部時代は『仕事の場面で歯を見せるな』と教えられていましたから。ところがIR室長になった途端、当時の副社長に呼ばれて『笑いが足りない。笑う練習をしなさい』と命じられました(笑)」
社内で数字に向かう仕事から一転、投資家を前に話さなければならなくなったとき、どうしてもこわばった表情になっていた。当時の副社長は、余裕をもってコミュニケーションをとりなさいと教えてくれたのだった。最勝寺さんは鏡の前で必死に笑う練習を重ねた。
株主や個人投資家を集めて行うセミナーでは、ちょっとした言葉の使い方にクレームがついた。
「『株主・投資家のみなさま』と話したら、『どうして株主にも“さま”をつけないんだ』とお叱りをいただきました」
細かいことだが、きちんと「株主のみなさま、投資家のみなさま」と言わなければいけないのだと心した。
KDDI理事 コーポレート統括本部 経営管理本部 副本部長。
1964年千葉県出身。87年同志社大学文学部卒業後、出版社勤務を経て88年第二電電(現・KDDI)入社。経営管理部、IR室長、財務・経理部長などを経て、2014年理事に就任。
撮影=貝塚純一