「東日本大震災直後、東京も節電でほの暗くなりましたよね。光というものへの問いがあらためて投げかけられたと思います。煌々とした明るさとは違う“ほの暗さ”もまた人間らしい生活に必要ではないでしょうか。煌々と照らす必要のない場所もあるはずです。私は“しなやか”と“艶”という言葉が好きなのですが、心の健康を取り戻せるスポットになる場所を、しなやかで艶のある明かりで照らしたいのです」
日本と西洋では光に対する感覚が異なる。「日本が水彩画だとしたら、西洋は油絵」と語る美穂さんはイギリスで学び、アメリカの照明事情にも詳しい。日本と西洋をつなげて光で表現することができるのが彼女の強みだ。
「それから、女性がビジネスをやっていくうえで“きれいに見せる演出”が必要だと思っています。そのために照明ができることがあるはず。たとえお疲れ気味でもコンディション良く、生き生きして見えるような照明デザインを考えたい」
ハロゲンからLEDになったことを「絵の具が変わったようなもの」と説明してくれた。照明の世界はいま、大きく変わっている最中だ。最新技術と情報をキャッチアップしながら、照明デザイン界の新世代として、これからさらに注目されるプロジェクトを手掛けていくに違いない。
ALG建築照明計画(株)照明デザイナー。1980年東京都生まれ。日本女子大学家政学部家政経済学科卒業後、建築照明計画株式会社(ALG)入社。渡英してロンドンAAスクール修了。ロンドンFoster+Partners勤務。帰国後、ALG照明計画ディレクターに就任。
撮影=大槻純一(撮影協力:一般社団法人 東京アメリカンクラブ)