最も親密な関係だからこそのデメリット

自分のことを最も理解しているだろう妻からのアドバイスは、とても有効であると推測されます。性格を熟知しているのはもちろん、能力のある部分と足りない部分もある程度把握できているでしょうから、助言によって助けられるケースも少なくないはずです。

しかしその半面、親しい関係性であるが故に「言い過ぎてしまう」ケースも起きてしまいます。相手のことを真剣に考え、最も理解し、さらに家庭という場を「守る」立場として、リスクを最小限にするための助言が、相手にとって愉快だったり、十分に傾聴に値するものとは限らない。言われたら辛いことも、きっとあるのです。

もちろん、パートナーが現実を直視していない、勝算のない賭けに出ているなど、本人にとって耳の痛い話をすることが最善であるケースも時にはあるでしょう。しかし逆に「あなたが知らないパートナーの一面」が、仕事においてその行動をとる理由になっていることもあるはず。あなたの知らない能力を生かして「ここは踏ん張り時だ、少しリスクを冒してでもチャンスをものにするためにチャレンジしよう」と思っている時に、知らず知らずの間に「嫁ブロック」を発動してしまわないよう、気を配らなくてはなりません。そうしないと、家庭へ仕事が流入し過ぎてしまい、夫にとっては気の休まる場所がなくなってしまうとも限らないのです。

嫁ブロックをしてしまわないためには

思わぬ“嫁ブロック”をしないようにするにはどうしたらいいのか? これはとても難題です。例えば、仕事の同僚であれば多少のリスクがあるなと客観的に見て思えるケースでも、本人の意思が固ければ「やっちゃえ!」などとけしかけることもあるでしょう。自分にはリスクがない立場だからです。しかし、妻の場合は微妙です。少しでもリスクを回避するために、確実な選択肢を取ることを相手である夫に要求するはずですから。なので、嫁ブロックをしないためには、立場の使い分けが必要になるでしょう。リスクが大きい内容であるほど、自分の立場を例として挙げた2つに分けて、発言するのです。大変ですけど。

リスクの大きな問題ほど、立場を2つに分けて発言することを意識すべき。

具体的な言い方としては、「私が会社の同僚だとしたらAだけど、妻としての立場からの発言だとB」という感じでしょうか。そうすることで、発言が感情的にならないという効果も見込めます。夫からは「結果的に、どう考えればいいんだよ」とイライラされそうですが、そこからは丁寧な話し合いをする必要があるでしょう。ただ、妻という立場だけで物事を考えてしまわず「嫁ブロックをむやみに発動しない」ことが、結果的に家庭を平穏なものにすると考えるのが、現状ではベターかもしれません。家庭への仕事の流入が増えてくればそのうちこういう悩みもなくなりそうですが、それはまだ先の話ということで。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。