ただし、ロボットが身近になると、実は手間が減るのではなく、手間がかかるように変化してくる。たとえば、家電の場合、私たちのくらしをいかに便利に、手間要らずにするかというところをポイントにして技術開発が行われる。一方、ロボットはなんらかのコミュニケーション、関係性を引き出すというところに技術開発のポイントがおかれる。ロボットは、家電のようなことをしてくれるかもしれないが、基本的にコミュニケーションが必要になるという点で手間なのだ。
たとえば、ソニーのロボット「AIBO」の開発のコンセプトは「何の役に立つのかわからないこと」だったといわれている。手のかかる子だからこそ、これほど長い間ユーザーに愛され、修理不可能になればお葬式までしてもらえる。文化の問題と分析もできるが、便利になりすぎた現代で「手がかかる」ということは、かえって愛着がわくということでもある。
このように、近い将来、おしゃべりができたり、身近でお手伝いしてくれたりするロボットが増えてきて、メンタルケアやライフログというような新しいコミュニケーションやライフスタイルが生まれてくることが期待されている。そして、こういった技術は、すごく快適だったり、便利だったりしても、自然な形で入り込んでくるだろう。携帯電話がなかった時代のことを今思い出すのが難しいように、私たちの生活が大きく変わったことを実感するのは実は難しい。普段の生活の中にロボットがいる未来は、きっといつの間にか始まっている。
イラスト=Yooco Tanimoto