「受け継ぎの法則」とは、会話の主導権を相手から自分へ移す、これを無理なく、相手へ不快感を抱かせることなく成功させるための手法です。まずは、決裁者は「自己顕示欲求」が高い、ということを思い出して下さい。一般的な傾向を整理するとこうなります。

・成功している人(この場合は主に決裁者)は、自分のことを話したがる。
・会話では、相手が長く話している場合の方が、人間関係がうまくいく。
・目上の人から目下が、あるいはクライアントから自分が発言権を得るには、適切なタイミングとやり方を守らないと、相手に不快な思いをさせてしまう。

上記を念頭において、相手に気持ちよく話してもらった後に、会話の主導権を上手に受け継ぐ必要がありますが、そのためにはタイミングが重要です。

図を拡大
「受け継ぎの法則」を利用する3つのタイミング

●「受け継ぎの法則」を利用する3つのタイミング
(1)ずっと話し続けている相手の、声のトーンが下がる時。
(2)相手が息継ぎをした時。
(3)相手が資料に目を落とした時。

これらのタイミングを見計らって、「受け継ぎの法則」につなげましょう。

「受け継ぎの法則」の3ステップ

図を拡大
「受け継ぎの法則」実行の3つの手順

ここで初めて「受け継ぎの法則」を実行します。言葉以外の非言語表現をまじえたこの法則には、3つの手順があります。

●「受け継ぎの法則」実行の3つの手順

【Step1】相手をよく観察して、自分の発言のタイミングを狙って、相手を見つめ直す。
【Step2】アイコンタクトをきちんと相手に向けていて、タイミングがきたら片手を小さく動かしたり身を乗り出したりして、自分の「話したい気持ち」を無言で発信する。
【Step3】それでも相手が気付いてくれなかった時に初めて、「あの……」と声を発する。

このように、小さい動作から大きい動作へ、自分の発信のレベルを上げていくのがポイントです。相手の声のトーンが変わらず、息継ぎもなく、どんどん話している時に、いきなり【Step3】のように「あの……」と言ったのでは、「なんだい?」と言わんばかりの嫌な顔で見つめ返されるだけです。

相手の話し声が少し下に落ちる「フォーリングイントネーション」で言葉が区切れた時、「そうでしたか、よく分かります」と、きちんと聞いていたことのフィードバックを返してから、自分の話を切り出しましょう。