「営業は時間・体力・鋼のハートを持つ人にしかできない」。そんな男性職場の暗黙知を、営業女子たちはどう打ち破ったのか──。女性チームによる社内改革を追う連載、最終回は食品容器メーカー「東罐興業」の事例をご紹介。営業女子5人が成しとげた働き方改革とは?

「時間・体力・鋼のハート」が必要な仕事

食品容器の製造販売を手がける東罐興業。1943年設立と長い歴史を持つメーカーとあって男性社会の側面が強く、営業職で女性の採用が始まったのは1989年から。営業本部で専任課長を務める落合治美さんは、その第1期生で、同期の中では唯一の現役営業女子だ。

社内改革を進めた東罐興業の皆さん。
社内改革を進めた東罐興業の皆さん。(撮影=やどかりみさお)

「同期は皆結婚退職して、今は私が最年長です。私たちの後に入社した女性も結婚や出産を機に辞めることが多く、いちばん歳が近い後輩でも一回り以上下。これは、当時は結婚したら家庭に入るのが当然という感覚の女性も多かったからだと思います」

その後、産休・育休制度が整えられたものの、今も女性営業の比率は全従業員の約0.8%。制度はあっても、男性だけでなく女性の中にも「営業と育児の両立は難しい」という固定観念のようなものがあり、実際に営業職に復帰する人は極めて少ないのだという。

営業本部の吉永摩耶さんは「当社では、営業職は時間・体力・鋼のハートを持つ人しかできないと言われてきた」と語る。営業業務は顧客対応から生産工場との調整まで多岐にわたり、何かトラブルがあればすぐ現地に駆けつけるのが基本。双方の要望がぶつかってしまい、板挟みになることもしばしばだ。また、営業職の担当範囲が広い分、業務が属人化してしまう傾向も強かった。