「え~」はプレゼンには不要

前項「ノイズカット」で触れた「言葉のヒゲ」について、詳しく説明しましょう。これは聞き手にとって耳障りな、理解を妨げる言葉のことです。ヒゲの例としては「え~」「えっと」「まぁ、その」「やはり」など、話始めや途中に何度も出てきてしまう口癖です。これらは意味を持たない言葉ですし、あまりにも多いと聞き手が気になって、話に集中できなくなってしまう“ノイズ”です。

また、「要するに」「基本的には」という、一見するとヒゲではないように感じる言葉も、何度も発することで「言葉のヒゲ」になってしまいます。「要するに」などはその後に要約した文が続かずに、普通の説明が続いたら、かえって「まとめられない人」と認識されてしまい逆効果です。これらのヒゲ言葉は、口グセになっている場合もありますし、普段は出なくても緊張すると焦って出てきてしまうことがあります。

沈黙への恐怖が「ヒゲ」になる

なぜ、このようなヒゲが出てきてしまうのでしょう? それは「沈黙への恐怖」が原因です。緊張している場面では、何も言葉を発しない、音がしない時間がとても長く感じられ、怖くなるものです。早く話さなければという焦りが、知らず知らずのうちに、「え~」といった言葉になって出てしまうのです。

しかし、自分が話している時にヒゲが出ているかどうか気付いている人はあまりいません。ヒゲを取るには、まず自分がどんなヒゲ言葉を発しているかに気付くことが第一歩です。まずはスマートフォンなどで自分が話している動画を撮影してみてください。動画が難しければ音声だけでも構いません。録音を聞いてみると、自分では気が付かないヒゲが見つかるでしょう。いったん見つかると、話す時にヒゲが出ると自分でも気が付くようになります。意識すると、ヒゲは自然に減っていくものです。

とはいうものの、ヒゲが癖になっていて、どうしてもとれない時はどうすればよいのでしょうか。効果的なヒゲとり対策を解説します。

ヒゲとり対策(1) 迷わず沈黙

プレゼンテーションでこのヒゲが出てきそうになった場合には、まず、迷わず沈黙してください。沈黙の時間は、話し手が思っているほど聞き手にとっては長く感じられません。次の言葉がなかなか出てこない、忘れてしまった、言葉に詰まった、などの時は、迷わず沈黙してください。

そのためには「沈黙は気まずい」という意識を変えましょう。むしろ際限なくずっと話し続けられるほうが、聞き手は疲れてきます。それまで話されたことを理解したり、考えたり、質問をしたりするためにも沈黙の時間は必要なのです。

ヒゲとり対策(2) 一文を短くする

もう一つのヒゲ取り方法として、一つひとつの文章を短くするのも有効です。文章は、長くなればなるほど主語・述語、修飾節などが絡み合い複雑になります。長文を話していると、自分でも何を言ってるのか分からなくなって、言葉につまってしまい、結果、ヒゲが出てしまうということになります。

まずは「滔々(とうとう)と長い文章を話すのが流暢でかっこいい」と思う意識を捨てましょう。プレゼンテーションが上手く説得力のある人の動画を見ていると、短くシンプルな文を、たっぷりと間をとって話しているのに気が付くでしょう。文章を短くして、その間は沈黙、つまり「間(ま)」をとるという方法でヒゲをとっていってください。