営業コストと粗利の関係
友の会の謎を解く上で、ポイントとなるのが粗利です。粗利を考えるためには、まずは営業コストの構造を理解する必要があります。
営業コストは、「売上原価」と「販売費及び一般管理費」(以下、販管費とする)に分けられます。基本的に、売上原価は商品の原価を指し、売上に連動して発生する変動費です。これに対して、販管費は人件費や地代家賃といった設備関連費、経費などから構成され、売上とは関係なく発生する固定費です。先ほど百貨店業界は一般的に利益率が低いと書きましたが、それは「良い立地に店舗を構え、高級感あるしつらえの中、丁寧な接客を行う」という業界の特性によるところも大きいと考えられます。
そして、売上高から変動費と固定費を含めた営業コストを差し引いたものが営業利益であるのに対し、変動費部分の売上原価のみを差し引いたものは粗利と言われています。
ある商品をいくらで売るかを決める際、粗利が重要な役割を果たします。粗利が出なければ売れば売るほど損ということになりますが、粗利が出ていれば売ることで固定費を少しでも賄うことができるため、売っても損にはなりません。
さて、粗利は決算書上、「売上総利益」という科目で表示されますが、2015年3月期の三越伊勢丹の売上総利益は、3554億円となっています。そのため、(売上総利益÷売上高)で計算される粗利率は27.9%となります。
ここで、友の会で月々1万円の積み立てコースに加入した場合、百貨店側は12万円の積み立てに対して13万円分の買い物カードを付与しますので、13万円の商品に対して1万円サービスするということで(1万円÷13万円)で実質7.7%の値引きとなります。
商品の元々の粗利率が27.9%だとすると、7.7%値引かれた後の粗利率は20.2%となります。もちろん、粗利率は高ければ高いほどいいのですが、低くなってもその分多くの商品が売れることによって固定費をカバーできれば問題はありません。利益率が低くなっても、固定客を作って数多くリピートしてもらうことで、利益の額が伸びることだってあるのです。