日本酒ってカッコイイ飲み物なんだと気づいてほしい
東京のベンチャー企業を辞め、実家の酒蔵に戻って10年。紙パックの酒づくりから転換し、高付加価値の酒づくりを追求してきた10年だった。その中で生まれた紀土(KID)は年間16万本を出荷し、業績は右肩上がり。
だがその過程は易しくはなかった。
「いい酒をつくるには、経営者のメッセージが現場に伝わらなければなりません。でも当時は酒づくりは現場にまかせっきり。経営者が蔵に入ることもありませんでした」
そうして始めた現場改革は当然摩擦を生んだ。
「1週間で4人辞めていったときは孤独感を味わいましたね。でも僕の本心は変わっていないんです。モチベーション高く働けるものづくりの理想郷をここにつくりたい。僕はそれが正しいことだと思っているし、正しい道は勝てる道だと信じているから」
自分でも認める理想家。そのために挫折も多いが、いつも直球勝負の彼は社員との密なコミュニケーションを重ねていった。今では酒づくりに人生をかけたいと思う大卒の若者が全国から集まってくる。
「日本酒ってカッコイイ飲み物なんだと気づいてほしい」と、国内外でイベントも行う。一人の蔵元の仕事を超えているようにもみえるけれど、衰退する日本酒業界の活性化という大きな目標も見据えている。
●プロフィール
1978年、和歌山県生まれ。京都大学経済学部卒業。著書に『ものづくりの理想郷』。
●趣味/特技は?
マラソン。フルマラソンの自己ベストは3時間22分(東京マラソン)。
●応援したくなる女性は?
仕事に対して誠実な人。仕事ができる女性は話していても楽しい。
撮影=二石友希