相手の変化は「山場」で起こす、を意識する
シナリオでは「変化」を意識してデザインしましたが、ストーリーボードではその変化をどこで起こすかを「山場」として決めます。例えば、「これだけ大きな削減メリットがあるとは驚きである」という気持ちの変化を相手に起こしたい場合、山場は「費用対効果」というスライドになります。ここで確実に相手が驚くレベルの削減メリットを表現するのです。
多くの方はこの「山場」を決めずにプレゼンテーション資料を作られているのではないでしょうか? 山場を決めずに資料作成を始めると、変化を与える情報が分散しがちです。映画を思い浮かべてもらうと分かりやすいでしょう。心を動かされる名画には必ず印象的なシーンがあります。プレゼンテーションスライドも同様に、相手の気持ちに変化を起こしたい時にはインパクトのある山場が必要なのです。
この山場スライドは、印象的なグラフや図解など、他のスライドよりもしっかりと作成しましょう。逆に言えば、他のスライドはそれほど凝った作りにする必要がありません。完璧主義な女性の方は全てのスライドを凝ったものにしがちですが、それは過剰品質とも言えます。
山場を設定しておくメリットとしては、プレゼンの時間が短くなってしまった時に必要な情報をしっかりと伝えることができることです。例えば、相手の方が遅刻してきて、1時間で準備していたプレゼンを「30分でやって」と言われた時に、山場が決まっていないと全体を駆け足で早口で説明、相手は消化不良……という状態になりがちです。山場が決まっていれば慌てることなく、「特にここはご理解いただきたいところです」「ここはお時間ある時に見てください」とメリハリの効いた説明ができます。
また、余談ですが、よく「A4一枚にまとめろと言われたのですが、どうしたらよいのでしょう?」という質問を受けます。これは「エグゼクティブサマリー」と呼ばれるもので、多忙なエグゼクティブが膨大な資料に目を通さずに理解するための資料です。たまにものすごく小さく縮小して本編の情報をできる限り盛り込んでしまっている資料も見かけますが、それでは逆効果です。
エグゼクティブサマリーは「映画の予告編」だと思ってください。映画の予告編は、印象的なシーンが続きつつも、大筋のストーリーが想像でき、本編を見たいという欲求をかきたてますね。つまり山場スライドをストーリーが分かるように配置していくと魅力的なエグゼクティブサマリーになります。