年を追うごとに増額される修繕積立金
一般のマンションでも同様に修繕積立金の値上げはあるのだが、国土交通省のマンション総合調査(2013年)で見ると、20階以上のタワーマンションの修繕積立金はそもそもが高い。それがさらに上がるとしたら、売却時に不利になる可能性があるのはもちろん、定年後の暮らしに不安を抱えることになる。年金生活で毎月数万円以上に及ぶ管理費、修繕積立金を払い続けるのは大変だ。実際、定年を機に売却するケースも出ている。
それでも1回目の大規模修繕まではなんとかなる。「それほど修繕予算が潤沢にあるわけではないにも関わらず、当初の仕様が共用部も含め、全体に高めに作られていることもあり、1回目の大規模修繕でエントランスロビーの間接照明、絨毯なども取り換えて欲しいと押し切られることもあると聞きます」とは前出の村島氏の弁だ。他のマンション以上の出費があっても、1回目の大規模修繕で修繕費用が足りなくなることは考えにくい。だが、最初から大盤振る舞いをしてしまう、そして、それを当然としてしまうと、2回目以降の大規模修繕では積み立てた修繕費用だけでは足りなくなる危険も考えられる。
問題はそれ以降。「実際のタワーマンションの修繕積立金を調査した研究者によると、大規模修繕の資金計画が築15年目以降に不足しているケースもあると言います。築20年以上ともなると、50階程度で1基1億円とも言われるエレベーター、超高層を支える多くの設備関係の交換も想定され、そうなると非常に多額に及ぶ。きちんと更新が行われないと、30年後、40年後に新築時と同じような快適な暮らしが保証されるか、怪しくなります」(前出・村島氏)。大規模修繕は1回目よりも2回目、2回目よりも3回目と修繕費用が嵩むものなのである。
「ホテルライクな暮らし」という落とし穴
予算が足りない状況で大規模修繕を行おうとした場合、住民から一時金を徴収する手もあるが、区分所有者の数が多いタワーマンションでは管理組合で意見をまとめるのは至難の業。ホテルライクな暮らしという、タワーマンションではよくあるセールストークに自分は何もしなくても誰かがやってくれるものと勘違い、当事者意識の薄い住民が多いのである。多くの物件では高層階、中層階、低層階と異なる所得層、家族構成の人たちが住んでおり、金銭感覚、利害関係はかみ合わない。高さごとにエレベーターも異なるような物件ではそもそも、異なる階層間にコミュニケーションがおろそかになりがち。都心部の、足回りの良い物件では居住としてではなく、オフィス使用、投資用などとして所有している人もおり、意見はさらにまとまらない。
加えて1970~80年代までと違い、最近のマンションでは20代から80代までと幅広い年代が購入している。都心のタワーマンションではその傾向が特に顕著で、そのため、入居後早期に相続が発生する可能性が高い。相続人たちがすでに自宅を所有しており、相続した部屋に住まないとしたら、住戸は宙に浮く。売りに出されるならまだしも、空き家になる、管理費などが払わなれない住戸が増えてくるとどうなるか。説明するまでもない。また、購入者にDINKSが多いのもタワーマンションの特徴だが、ここでも相続後に不安が残る。引き受け手がいない可能性が高いのである。
また、近年、懸念されるのは外国人が所有する住戸の増加である。外国人とはいえ、同じ区分所有者になるわけだが、彼らに対してそもそも何語で管理組合の通知を出すべきなのか、あるいは法律、常識の異なる人たちを相手に物事を進められるか。彼らが住宅をそのままに本国へ帰るなどして連絡が取れなくなった場合、外国人の割合にもよるが、管理組合の決議に支障をきたす可能性もある。現在建てられている物件であれば建替えはかなり先だろうから、誰も心配はしていないと思うが、将来的には外国人所有者の存在が建替えを阻害する可能性も高い。