人の気持ちが読めれば商売はうまくいく

クックパッドの最大の魅力は、「つくれぽ」にあります。「つくれぽ」とは、サイトに投稿されているレシピに対して、実際に作ってみたユーザーがその感想を写真付きでさらに投稿するものです。この「つくれぽ」があるからこそ、レシピの投稿がどんどん増えていくと言っても過言ではありません。なぜでしょうか。

「つくれぽ」がたくさん投稿されると定番レシピとして信頼性が高まり、投稿者のモチベーションアップにつながります。家で料理を作っても家族にしかおいしいと言ってもらえませんが、クックパッド上だと多くの称賛が得られます。それにやりがいを感じて多くの会員が投稿を続けるのです。コンテンツ提供の対価としてお金をもらうと義務感に駆られた仕事になってしまいますが、称賛を対価に趣味として純粋に楽しむことができるクックパッドは、コンテンツの提供者である会員に感謝されながら、さらに熱心な会員からは会費を得ることに成功しているのです。

広告収入を得ているマスコミ媒体の多くは、自ら魅力的なコンテンツを作成し、無料あるいは有料で視聴者やユーザーに届けています。そういう意味で、ユーザーにコンテンツを提供してもらい、かつユーザーからもそれなりの収益を得ているクックパッドのビジネスモデルは斬新だと言えます。

インターネットの普及により、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌のマスコミ4媒体の広告収入は減少傾向にあります。今後はクックパッドのようにユーザーがお金を支払ってでもコンテンツを提供したいと思えるようなサービスを考え出し、広告収入に次ぐ事業として育てていくのもいいかもしれません。うまくいっている会社の有価証券報告書には、そのような新しい「もうけ」のヒントが隠されているのです。

秦美佐子(はた・みさこ)
公認会計士 早稲田大学政治経済学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、優成監査法人勤務を経て独立。在職中に製造業、サービス業、小売業、不動産業等、さまざまな業種の会社の監査に従事する。上場準備企業や倒産企業の監査を通して、飛び交う情報に翻弄されずに会社の実力を見極めるためには有価証券報告書の読解が必要不可欠だと感じ、独立後に『「本当にいい会社」が一目でわかる有価証券報告書の読み方』(プレジデント社)を執筆。現在は会計コンサルのかたわら講演や執筆も行っている。他の著書に『ディズニー魔法の会計』(中経出版)などがある。