相手が言いたいことを、本当に理解できているのか不安。先入観無しで人の話を聞くことは難しいけれど、どこかに突破口はあるはず。

白か黒かハッキリ決めず、常に楽観思考で

圧倒的に男性が多い業界に身を置いて24年。岡本知恵さんは、社内でも数少ない女性部長の一人だ。現在の部署では、医療機器用MRIや半導体製造装置のコンポーネントを販売。取引先は各国の大企業で、月の半分は海外を飛び回っている。

【写真右/住友重機械工業 岡本知恵さん】海外から来日した取引先のスタッフと、ミーティング。会食は寿司屋に行くことが多い。「皆さん、“本物の寿司”に感動されます」

「楽観的で、ある意味いい加減」。自分をそう分析する彼女が、交渉の際に、常に頭に入れていることがある。

「白か黒だけではなく、その間もある。むしろそのほうが多い。そう思えば心に余裕ができ、相手の話もフラットに聞くことができます」

自社で引き受けられそうにないものも、その場で断らない。可能な限り客の要望に添えるよう、じっくり話を聞いてからいったん持ち帰る。最初からこうあるべきと決めつけず、結論を急がない姿勢が大事だということは、年齢を重ねるほど感じるようになった。

「アメリカやイギリスのトップの方は、日本人以上に“空気を読む”ことにたけているんですよ。私が曖昧なことを言っても、よく聞いてくれる(笑)」

社内での調整も同じだ。技術者や工場のスタッフに、持てる能力以上の要求に応えてもらえないか、妥協点を探りつつ働きかける。

「信念のある立派な人間ではないんですよ」と、どこまでも控えめな物腰が「柔よく剛を制す」を体現している。


 ■好きなことば 
「粗にして野だが、卑ではない」

 ■リラックスするとき 
寝ているとき。平日はよく眠れないので、休日はとにかくよく寝る。

 ■朝ごはん 
「カルビー フルーツグラノーラ」に無脂肪ヨーグルトをかけて。

 ■好きなくつ 
基本的にはパンプス。最近はフラットシューズを履くことが多くなった。


住友重機械工業 岡本知恵
精密機器事業部営業部部長。1991年入社。本社資材室で、海外に部品を調達する仕事に携わる。97年より営業に転じて18年目。2014年より現職。17人の部下を持つ。46歳。

撮影=冨田寿一郎