老いても美しくありたい、生きる尊厳を再考する

美容業界についてもう1つ、美容サービスを受ける側が抱える課題についても紹介したい。それは高齢社会の進行で、在宅介護を受けたり、介護施設で暮らす高齢者の中に「美容室に行きたくても行けない人が増えている」ということだ。柏村さんは、この問題を次のように考察する。

美容インフラのサービス拡充が、今後の日本の高齢化社会を支えていけるか、期待する声は多い。

「高齢化が進み、今後ますますお年寄りの在宅介護が増えてきます。その中で、介護が必要で自由に外出ができない高齢者の髪を、介護する家族が簡易的にカットすることも多くなるでしょう。しかし、身だしなみや美容は “イキイキと生きていく”ことに結びつくもの。移動に不自由な高齢者の中にも、“美容師のプロのサービスを受けたい”と希望する人がいるはずです。そう考えると、在宅介護を受ける“高齢者の美容”についても、サービスの形を作らなければなりません」

柏村さんはまた、「おしゃれが好きだった自分の母親や、あるいは自分が介護される側になったとき、美容室に行けなくなり、仕方なく家族に髪を切ってもらう状況を喜べない気がする」と言う。同じ考えを持つ人は、決して少なくないだろう。