「振り込め詐欺」に加え「振り込む詐欺」も横行

最後に、これだけ政府や金融機関が「お金を振り込まないで」と啓蒙しても、親世代をターゲットにした「振り込め詐欺」が減らないのは、やはりそれだけ手口が巧妙化しているからです。

2014年に全国の警察が認知した振り込め詐欺など特殊詐欺の被害額は、過去最悪の559億4354万円。前年から約70億円も増えています。

また、宅配便などで現金を送らせる手口が急増し、1件あたりの被害額は738万円に上っています。一方、銀行などで声を掛けて被害を未然に防いだケースは、1万731件で約296億円でした。合算すれば855億円分の事件が発生したことになり、すごい数字です。このほかに表に出てこない隠れた被害も多いとか。

私の肌感覚でも、シニアの多くは、振り込め詐欺の電話を受けた経験があるようです。

私の叔父は、息子が危機なので、「新幹線でお金を持ってきて」と、詐欺師にいわれたそうです。振り込め詐欺だな、とはわかっていも、息子に何かあったのでは……と心配になったそう。

わが家では、私が在宅しているときに、母親へ、孫のピンチを救うためという振り込め詐欺の電話がかかってきました。それからは、私の弟が母親に「オレだけど」とふざけて電話をかけてきては、だまされないように注意しています。

さらに、「還付金が振り込みでもらえますが、そのためには申込金が必要」と、詐欺師といっしょにATMにいく、あるいは「手続きは面倒だから、私が代わりにいってきてあげる」と、キャッシュカードを預かってそのままいなくなるといった、「振り込む詐欺」も横行しているそう。

振り込め詐欺も振り込む詐欺も、だまされたことに気づかぬままお金をとられてしまうのです。詐欺に遭わないためにも、親と話し合い、問題意識を高めていきましょう。

親が「振り込め詐欺」にだまされない鉄則は

●子どもや孫とはいつでも確実に連絡が取れるようにしておく。
●常に電話は「留守番電話」に設定。
●お金の話になったら、電話を「ガチャン」と切ると約束する。
●玄関の鍵を閉め、知らない人には鍵を開けない。
●キャッシュカードの暗証番号は、普段からけっして口にしてはいけない。

マネージャーナリスト 坂本君子(さかもと・きみこ)
広告代理店、出版社にてサラリーで働くエディター、ライター、プランナー、コピーライターを経てフリーに。得意分野は投資、住宅関連。大ブレイクはしないけれど、仕事は堅実でハズさない。満を持して2008年に起業。個人投資家としての投資歴は15年選手(ちょっぴりプラス)。