誕生のきっかけは、同ブランドリーダーの男性が、以前忙しく働くシングルマザーに言われた「短時間で簡単に、でも肌にやさしく、きちんと手入れできるコスメが欲しい」という言葉だった。

そう、大事なのは「受容と共感」だ。女性のちょっとした悩みに「そうだよね」と真摯(しんし)に耳を傾け、それを自分が解決してやろうと、ひと肌脱ぐココロ。そんな、「女子力」や「姐御力」、それが、本物の女性向けマーケティングに求められる力なのだ。私のような女性マーケッターも、立場が違う女性の気持ちを理解するのは難しい。まして男性なら、むべなるかな。

そこで最近は、「女装マーケティング」も注目されている。昨年10月に開かれた同名セミナー(企画:ひみつきち)では、参加した男性たちが文字どおり女装姿に。ウィッグやワンピースを身にまとい、メイクアップ指導を受け、女性たちの心理を理解しようと努めた。

「そこまではできない」とたじろぐ男性には、もっと簡単な方法をお薦めしたい。それは職場や家庭で、女性の部下や同僚、妻の声に、キチンと耳を傾けること。

アサヒビールが10年9月から発売している、アルコール分0%のカクテルテイスト清涼飲料「ゼロカク」。開発のきっかけは、同社の男性研究者が、お酒の苦手な妻のために試作品を作ったこと。

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もはやママ会にはノンアルコール飲料が必須!

彼は妻のママ会にも同行。「アルコールを飲んでいるかのように楽しみたい」という妻の女ゴコロに寄り添い、ひと肌脱いだのだ。当時は、「母親が日中から飲むなんて」という声もあった。だが、いまやランチ会やパーティーで「ノンアルコール飲料を飲んでみたい(飲んだ)」と答えるママが9割。「ママ会」は、ノンアル飲料市場を支える大きな柱となっている。

女性も男性も、自分以外の多様な女ゴコロに耳を傾け、共感することで、本物のヒットが生まれる。ふだん「オジサンっぽい」とスタッフに揶揄(やゆ)される私も、もっと女子力や姐御力を磨かねば!

牛窪 恵

世代・トレンド評論家。マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。財務省 財政制度等審議会専門委員等を務める。