護送船団の来し方、行く末
ところが21世紀に入って日本経済の高度成長期は終わりました。長期の経済低迷が続き、成熟経済社会へと移行する中で、親世代から当たり前のごとくプレジデントウーマンオンライン読者世代へと引き継がれてきた「銀行神話」は、もはや実際には前世期の名残に過ぎないのです。
実は1990年代後半、日本経済はバブル崩壊と共に深刻な不況に陥ったのですが、この時日本の銀行は軒並み強烈な苦境に立たされました。バブルに踊った不動産業者が相次いで壊滅し、そこに巨額の融資を積み上げていた銀行の多くが、大量の不良債権を抱え込んでしまったのです。
それまで銀行は産業界を支える存在として大蔵省から特別に守られ、銀行は絶対潰れないという「銀行不倒神話」がありましたが、あっさり覆ったのです。いくつかの銀行は規模を問わず破綻して、倒産を免れた大銀行も次々と行政指導のもと、合併による業界大再編が起こりました。
そして国家の金融システムを守るため、不良債権処理には多額の国家予算が投入されました。更には生き残った銀行も、不良債権で消耗し切った体力を維持するため、こぞって貸出債権の圧縮へと一斉に動いたのです。
かつての戦後20世紀、あらゆる産業界の発展に寄与してきた銀行が、今度はその頑張っている産業界から資金を強引に引き揚げる(貸し渋り、貸し剥がしと言います)、日本経済の活力を損なう存在に成り下がってしまったのでした。
この時、“輝ける銀行業界”は過去のものとなったのです。厳然たる事実として、それ以降銀行業界の貸出金残高は、ほとんど回復することなく現在に至っています。