お金という名の血液がない貧血状態・ニッポン

どうでしょう、皆さん。こうした歴史的事実に鑑みてもなお、銀行は偉い、銀行は正しい、銀行に任せておけば安心……と言い切れますか?

無論、銀行だけが悪者であるわけではありません。しかし日本経済がデフレという重篤な病に罹ったのは統計上1997年とされています。銀行が産業界から一斉に貸出金回収へと動いたのはまさにこの時期。即ち日本が“デフレ病”に罹ることとなった大きな要因の1つとして、銀行が実体経済から産業活動の血液たる資金を一気に吸い上げたことで、日本経済全体が途端に貧血を起こし、デフレ不況に陥ったことは否めないことなのです。

何だか「銀行神話」の本質を説明しているうちに、21世紀の銀行ビヘイビアを非難するばかりの論調になってしまいましたが、要するに銀行だって間違いを犯す、普通の産業の1つに過ぎないということです。

そう気付いたならば、銀行にひたすらお金を預けること、つまり「預金は正義」の誤謬に思い至るはずです。

とりわけ現在はちょうど、20年近く深刻なデフレ不況に悩まされ続けてきた日本経済が、ようやくその病から脱却する途上です。今改めて銀行が経済に果たす役割を考え、私たちの預金が今どのように使われているのかを知ることから、「脱デフレ社会のお金との付き合い方」へと思考を進めるべきで、プレジデントウーマンオンライン読者の皆さんにはしっかり納得の上で、「脱・預金バカ」への行動規範を学んでいただきたいと思うのです。

では次回は、脱デフレ社会で、預金と私たちの関係はどう変わるのか!?  そこを解説します!

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業後、現在の株式会社クレディセゾン入社。セゾングループで投資顧問事業を立ち上げ、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、株式会社クレディセゾン インベストメント事業部長を経て2006年に株式会社セゾン投信を設立、2007年4月より現職。米バンガード・グループとの提携を実現し、現在2本の長期投資型ファンドを設定、販売会社を介さず資産形成世代を中心に直接販売を行っている。セゾン文化財団理事。NPO法人元気な日本をつくる会理事。著書に『投資信託はこうして買いなさい』(ダイヤモンド社)、『預金バカ』(講談社)など。