仕事の失敗より辛かった娘とのこと
行くところ行くところ失敗はついて回るが、それよりも辛かった経験があるという。ひとり娘が幼かった時の苦い思い出だ。
子どもが生まれた志済さんは、夫の実家のそばに引っ越し、義父母に食事から保育園の送迎まで全面的なサポートをしてもらった。
「嫁としては失格ですね(笑)。その代わり、口出しはしないように心がけました。世代差があるので食べさせたいもの、着せたいものは違いますが、それは言っちゃダメと心して」
入札前ともなれば夜遅くまで仕事が続く。義父母からは「1週間に1度、迎えに来ればいいから」と言ってもらい、預けっ放しのころもあった。おかげで仕事に没頭できたが、1週間後、娘を迎えに行くと、自分のことを忘れている。
「帰るよと抱き上げると大泣きされたんです。生まれて1年間、あれだけべったり一緒にいたのに、なぜ? と割り切れない気持ちでした」
それからは義父母の家のお泊まりは週に1日と決め、19時半にはオフィスを出るようにした。入札近くになると土曜日の夕食後、娘を夫に任せ、オフィスに行って朝まで仕事をし、始発電車で自宅に帰るという離れ業も編み出した。そんな状況が2~3年続き、「今がきっとどん底だから」と自分で自分を慰めたこともある。
「今だったら無理。あのときは体力があったんでしょうね」