己のスペックを過大評価するべからず

一方で、自分の領域は責任感を持って働かないと、自分自身が気持ち悪い。中途半端にやっちゃった仕事って、どこか心残りが生まれるでしょう? それに時間は巻き戻せないし、仕事のやり直しってできないですから。

だから、眠くても辛くても、やらなきゃいけないってことはありますけど、やっぱりそこでも「かわす力」が大事。間違えたり、うまくできなかったりして、落ち込むことはもちろんあります。でも大体こんなもんだと思うことも必要。何事も塩梅ですね。

がっかりするのって、自分に対する期待度が高いというか、ある種のうぬぼれだと思うから。そう考えるようになってから、私自身、少しくらい失敗しても「私の機能に、これくらいのヒューマンエラーはつきものでしょ」と自分を許せるようになりました。

そう思えるようになったのは、40歳を過ぎてからかな。以前、働く女性の先輩方に「40を過ぎたら楽になるわよ」って言われましたけど、本当でしたね。それこそ体力の減退と反比例してくるというか(笑)。体力が衰えてくると、いろんなことに対する塩梅というか、上手にかわす、匙加減のようなものが自然と分かるようになってくる。

若いころは、そうした先輩のアドバイスも「若さに対する負け惜しみ」くらいに思っていたけど、いざその年齢を迎えたら、先輩の言うことは比較的当たっていた。だから、アラフィフやもっと上の先輩たちが、すごく楽しそうに仕事をしているのを見ると、私も「まだまだ行ける」と思うわけです。

ジェーン・スー
東京生まれ東京育ちの、生粋の日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。音楽クリエイター集団agehaspringsでの活動に加え、TBSラジオ「ジェーン・スー 相談は踊る」をはじめとしたラジオ番組でパーソナリティーやコメンテーターを務める。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)がある。TBSラジオの番組をまとめた『ジェーン・スー 相談は踊る』(ポプラ社 編者/TBSラジオ ジェーン・スー 相談は踊る)は、ラジオリスナーでなくとも、ジェーン節を堪能できる内容になっている。

構成=葛山あかね