無責任を許す、ということ

そうした力を身につけるためには、適度に無責任になることです。といっても自分にかかる職責に対して無責任になることではないですよ。例えば、あるプロジェクトの自分には手の届かないところのクオリティや、他人の仕事に対する姿勢などに、ある程度は目をつぶるという感じ。

私自身、昔は何をするにも「こうでなければならない」と頭でっかちに考えていました。一緒に働いているスタッフにも「何で自分と同じペースで働いてくれないんだろう」と不満を感じたり、「もうちょっと頑張れよ」などとギャーギャー言いがちだったんです。でもある時、それは私のエゴだと思うようになりました。

適度に無責任を許せばいいんですよ。責任感が強すぎちゃうと「なんで、あたし1人だけ、こんなに頑張っているんだろう」という状況に陥りかねない。「黙って見ていられない」、「やっぱり私がやらなくちゃ」と何にでも手を出しちゃうと、そのやる気を利用しようとする小狡い人がどんどん仕事をふってくる。仕事は1人で抱え込むもんじゃない、自分だけでまわすものじゃない、という気づきが必要だと思うんです。

机の上を転がって玉が落ちる様子をぼんやり見ている、くらいの図々しさは必要ですよ。その玉に手を出しちゃうと、「あいつ、これもできるな」と周囲に思われて、みんなが玉を転がしてくるようになるから。手が届くことにも、時に無責任を決め込む。それも「かわす力」なんだと思います。大丈夫。自分が放っておいても、誰かがきっとその玉、拾いますから!