プラスαの制度も知っておこう

先進医療を受ける場合などを除けば、高額療養費のおかげで莫大な医療費がかかるという状況を回避できますが、それでも、ちょっと心配なのは、上限額に達する月が何回もある、といったケースです。

真由子さんは1度の入院で済みそうですが、病気によっては入退院を繰り返す、また家族それぞれが病気になる、ということも考えられます。上限があるとはいえ、月約9万円の医療費負担が何度もあったら、大変ですよね。

その場合に利用できるのが、「多数回該当」や「世帯合算」です。

「多数回該当」とは、直近12カ月の間に3回以上、高額療養費の対象になった場合、4回目からは限度額が下がるというもの。真由子さんの年収(約370万円~約770万円)では自己負担の上限は約9万円ですが、4回目からは4万4400円に下がります。

表を拡大
1カ月の自己負担上限額≪多数回該当の場合≫

「世帯合算」は、家族の医療費を合算して、合計額が自己負担の上限額を超えたら高額療養費を給付しますよ、というものです。

仮に真由子さんがシングルマザーだったとして、真由子さんに7万円、子どもに5万円の医療費がかかったとすると、それぞれの単独では上限に届きませんが、合計すれば12万円になるため、約3万円が戻ってきます。

もちろん、真由子さん自身が内科で7万円、外科で3万円など、複数の医療機関などを受診した場合も、合算できます。

ただし、合算できるのは同じ医療保険に加入している人のみ。共働きで、夫と妻で別々の健康保険に加入している場合などは合算できません。また70歳未満の場合、合算できるのは2万1000円以上の自己負担分のみで、それ以下の自己負担分は合算不可です。

高額療養費があるのに医療保険が必要?

このほか、勤務先で加入している健康保険によっては、「高額療養費付加給付」があり、自己負担は1万円までなど、高額療養費にプラスして独自の給付を行っているケースがあります。

民間の医療保険に入っている人は、「医療費が何十万円もかかったら大変だから」と考えていると思います。しかし、差額ベッド代や先進医療を除けば、一度に何十万円もの自己負担が発生することはないのです。本当に医療保険が必要か、考えてみたいですね。

最後に。高額療養費は診察を受けた月の翌月の初日から2年間が時効。逆にいえば、おおよそ過去2年前の分は請求が可能です。

請求漏れはありませんか?

フリーライター 高橋晴美(たかはし・はるみ)
1989年よりライターとして活動。資産形成、投資信託、住宅ローン、保険、経済学などが主な執筆テーマ。